ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、雨清うしみずでん役の堤真一さんから、第15回の振り返りをご紹介!


堤真一さん振り返り

──雨清水家の織物工場の経営がうまくいかなくなってきたことについて、どう思われますか?

傳は「人格者」として描かれているわけですけど、その分、「経営者」としては生ぬるかったのだろうと思うんです。例えば、当時の製糸工場などは、女工さんたちにとっては厳しい労働環境だったことで知られていますよね。ところが、傳の工場は、「商売」以上に「救済」の意味を持ってやっていた感じがあります。元武家のお嬢さんたちを集めて働いてもらったり、落ちぶれた元家臣なんかを呼び寄せてみたり。そういう仲間の家族を守るというある種の理想を持っていたのでしょう。でも、それでは世の中の激しい動きについていけない。その結果ということではないでしょうか。

──そして、傳は志半ばで亡くなってしまうわけですが……。

本当にね、志半ばもいいところで、奥さんを残していくこともそうだし、トキ(髙石あかり)のこともそうだし、すべてにおいて、やりきれないつらさを抱えたままでの死ですよね。傳自身の人生としてはまあまあ頑張ったとは思うんですけど。心配なのは、やっぱりタエ(北川景子)がどうなってしまうのかということでしょう。息子たちは、まあ、なんとか生きていってくれ、でしょうね、男ですから。でもあの姫様だった人が、侍女付きの生活をしてきた人が、全く違った環境におかれて、これからどうやって生きていけるのか……。そこは心配で死んでも死にきれないほどですね。

トキについては、親子で言い合えるということも大事だけど、彼女が松野家で育てられたから、トキはこういう子に育っているということを受け止めていたと思うんですよ。もし雨清水家で育てられていたら、もっと堅苦しい生き方になっていたかもしれない。この厳しい時代を生き抜く力は身についていなかったかもしれない。そこは血よりも生活環境ですから。だから、このトキならば、たくましく生きていけるだろうと、死ぬ間際でも思ったのではないかと思います。「この子は大丈夫」と。

──「ばけばけ」の今後の見どころをお願いします。

究極に大変なことが起きてもなぜか悲劇という感じにはならず、乗り越えていく姿に元気をもらえるのがふじき(みつ彦)さんの脚本です。時代の転換期に翻弄される登場人物たちが、強く、そして楽しく生きる姿をこの先もどうぞ楽しみになさってください。たまにつかさすけ(岡部たかし)さんにイラッとすることもありますが(笑)、怒りながらも笑ってしまう作品になっていると思います。