現在放送中の、連続テレビ小説「ばけばけ」。松江の没落士族の娘・小泉セツと、外国人の夫・ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに紡ぐ“夫婦の物語”です。
主人公・松野トキ役の髙石あかりさんから、トキがヘブン(トミー・バストウ)の元に女中として働きに出ることを決意した背景などについて、思いを語ったメッセージが届きました。
松野トキ役 髙石あかり

「ばけばけ」の主人公。
民話や昔話などを聞くのが大好きな松野家の一人娘。つらいことがあるといつも母のフミ(池脇千鶴)にねだって、怪談を話してもらう。家族思いで、フミが作るしじみ汁が大好物。
【髙石あかりさんのコメント】
――演じられる松野トキはどんな役ですか?
トキというキャラクターはあまりにも私自身。台本を読みながら「なんで私の思っていることを言うんだろう?」「このセリフ、本当に私!」と思うぐらいです。
制作統括の橋爪(國臣)さんとお話しして気付いたのですが、トキの自分と他人の線引きがはっきりしているところ、自分の感覚を押し付けたり介入したりしないところが私と似ているのかもしれません。「その人はその人でいい」と思っているから、おじじ様(勘右衛門/小日向文世)や父上(司之介/岡部たかし)が武士にこだわっているのも認められるし、ヘブンさんにもいつもと変わらず接することができるのだと思います。

また、小さい頃から家族を守るという感覚を持っているのもトキの特徴です。貧乏な家族のことを背負うのも使命感からだと思います。「優しくしたい」とかではなく、もう「そう生まれてきた」という感覚。やっぱり武家の子なのでかっこいいなと思います。
――共演者の方々とのエピソードを教えてください。
松野家の皆さんは本当にすてきで優しくて、池脇(千鶴)さんとはだんだん顔が似てきている気がします(笑)。おじじ様と父上の情けないけれどもトキをしっかり愛しているところも憎めません。台本が面白い上に小日向さんと岡部さんが演じられるとより憎めないキャラクターになっていて、相当憎いことをされているのに憎めないんです(笑)。
トキと錦織さん(吉沢亮)が初めて出会うシーンも忘れられないぐらいずっと笑っていました。アドリブ合戦になった時、私が仕掛けたお芝居を吉沢さんが全部受け止めてくださる安心感がすごかったです。受け止めるだけではなくやり返されて、笑ってしまうこともありましたけど(笑)。
ただ、笑わせようと思っているわけではなくて、この台本は何かを仕掛けようとすると失敗する台本だと思います。だから、全員武器を削ぎ落とされて、それでも戦いに行く感覚。「何もしないふざけ」を手に入れようと頑張っています。「ばけばけ」を通して役者としても「ばけ」られるように頑張ります!

ヘブン役のトミーさんは世の人々をメロメロにする方だと聞いていたのですが、お会いしてそれを実感しています。紳士的ですごく優しくてとにかく日本が大好きな方です。ヘブンさんと似ているところもあるのでお芝居で助けていただくことも多いでしょうし、これからもっと視聴者の皆さんもすてきなトミーさんの虜になると思います。
――第6週から第7週で、女中になると決心したトキをどんなお気持ちで演じられましたか?
おタエ様(北川景子)が物乞いとして頭を下げられた瞬間(第6週)に、ずっとトキの中にあったおタエ様の人物像やいろいろなものが崩れたのを感じました。家の格など、守り継いできたものを1個手放した瞬間を見てしまって、もう自分がすることは1つだと思ったのではないでしょうか。目の前にできること(女中)があったし、それを掴むことしかできなくて必死で掴んだのだろうと思います。

第35回の母上(フミ)の「産んでくれたおタエ様のためなら(ラシャメンになってもいいとトキが思った) 」という発言は衝撃でした。トキにそういうつもりはなく、ただもう全員が家族だったんです。それは雨清水家も含めてだったからこそ、母上の本心を聞いた衝撃や、三之丞(板垣李光人)の「おトキの家族から外してほしい」という言葉で気持ちがすごくぐちゃぐちゃになったと思います。ぐちゃぐちゃになったからこそ、とにかくこのお金を三之丞に受け取ってもらわないと!と、それだけを思ってかなり強く言いました。必死でした。
その後、母上がおじじ様に「ヘブン先生の女中を続けさせてください」と一緒にお願いしてくれた瞬間もいろんな感情があふれて、多分涙していたと思います。演じながら台本にはないものが常に生まれています。

――第8週について、印象的だったことを教えてください。
第8週、すごく楽しかったです!この週の台本は大笑いしながら読みました。ヘブンに頼まれて“ビア(ビール)”を探すというエピソードがあるのですが、“ビア”候補の品を紹介するときの言い方は、こちらに全部任せられていたので、「どうしよう…!」と思いつつもワクワクして、何ができるだろうとすごく楽しみに本番に挑ませていただきました。トキはせりふどおりでヘブンさんのリアクションはトミーさんのアドリブ的な演じ方でしたけど、せりふを言ってる感覚はほぼなくて、ただただ楽しかった…!
みんなでヘブンに教わってスキップに挑戦するシーンは、スキップもどんな風にやるかそれぞれに任せられていたので「あ、この人、こうくるんだ」みたいな感覚がお互いにあったと思います(笑)。最初にスキップを教わったシーンはトキもヘブンも酔っぱらっていたので、ここはもう何でもいいと思ってやっていたらお互いにツボってしまいました。それが完全に映像に映っていると思います(笑)。トキとしてヘブンとして笑っているのですが、きっと素に見えるはず。役として生きているけど、素の自分と曖昧になる瞬間がたくさん詰まった第8週でした。

――「ばけばけ」の見どころと視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。
ここまで声を出して笑いながら読める台本にはなかなか出会えないと思うほど、ふじきみつ彦さんの本が最高に面白いです。演出にもこだわりがあって、例えば照明が本当に暗かったり、松野家が本当に狭かったりするんです(笑)!メーク直しのために全員家から出なくてはいけないくらい狭いし、ほこりもすごいし、服にも汚しをほどこしてリアルに作っているのでそのあたりにもご注目ください。
良い作品になっていると実感しながら撮影できていること、そして皆さんに見てほしいと自信を持って言えることがすごくうれしいです。トキは上までは向かないかもしれないけれど、下を向かず、前を向いて生きていきます。その姿を見て、毎朝クスッと笑ってもらえたらうれしいなと思います。
【物語のあらすじ】
この世はうらめしい。けど、すばらしい。
明治時代の松江。松野トキは、怪談話が好きな、ちょっと変わった女の子です。
松野家は上級士族の家系ですが、武士の時代が終わり、父が事業に乗り出すものの失敗。とても貧しい暮らしをすることになってしまいます。
世の中が目まぐるしく変わっていく中で、トキは時代に取り残されてしまった人々に囲まれて育ち、この生きにくい世の中をうらめしく思って過ごします。
極貧の生活が続き、どうしようもなくなったトキのもとに、ある仕事の話が舞い込んできます。
松江に新しくやってきた外国人英語教師の家の住み込み女中の仕事です。外国人が珍しい時
代、世間からの偏見を受けることも覚悟の上で、トキは女中になることを決意します。その外国
人教師はギリシャ出身のアイルランド人。
小さい頃に両親から見放されて育ち、親戚をたらい回しにされたあげく、アメリカに追いやられ、居場所を探し続けて日本に流れ着いたのでした。
トキは、初めは言葉が通じない苦労や文化の違いにも悩まされます。ところが、お互いの境
遇が似ている事に気が付き、だんだんと心が通じるようになっていきます。しかも、二人と
も怪談話が好きだったのです!
へんてこな人々に囲まれ、へんてこな二人が夜な夜な怪談話を語り合う、へんてこな暮らし
が始まります――。
2025年度後期 連続テレビ小説「ばけばけ」
毎週月曜~土曜 総合 午前8:00~8:15ほか ※土曜は一週間の振り返り
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
出演:髙石あかり、トミー・バストウ/吉沢亮 ほか
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史、小林直毅、小島東洋
公式Xアカウント:@asadora_bk_nhk
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