連続テレビ小説「風、薫る」は、激動の明治時代を舞台に、それぞれ生きづらさを抱えていた一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)が、当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、傷ついた人々を守るために奔走する物語。上京後、環境が大きく変化したりんの姿を、演じる見上はどのように受け止めているのか。インタビュー後編では、直美役・上坂樹里に対する思いや、看護婦養成所パートの撮影が始まってからの現場の様子について話を聞いた。

見上愛インタビュー・前編はこちら


りんは東京で新しい風に出会い、いろんな人生の道筋に気づいた

――東京での生活が落ち着き、清水さぶろう(坂東彌十郎)やシマケンこと島田健次郎(佐野晶哉)と交流する中で、りんの世界はどのように広がったと思いますか?

“チームみず”とも呼べる皆さんは、本当に素敵すてきな人たちだなと思っています。それぞれきっと全く違うバックグラウンドがあって、社会に求めているものも違うはずなのに、どこかウマが合っていて、お互いの個性を尊重していますよね。今では当たり前に感じる価値観かもしれませんが、当時としては決して多くなかったであろう、変化を受け入れる心を持った人たちだと思いました。そういう東京の“新しい風”に出会ったことで、りんは母上(一ノ瀬美津/水野美紀)の「武家の娘として」という考え方を大切にしながらも、「もしかしたら自分にも、いろんな人生の道筋があるのかもしれない」と気づいていったのではないかな、と思います。


素直じゃない直美が、可愛くて仕方がない

――りんのバディとなる大家直美をどんなキャラクターだと感じていますか? 上坂さんと一緒にお芝居をする中で、印象に変化はありましたか?

放送の第1週、第2週の台本を読んだときは、直美に対して「なんてずる賢い子なんだろう」と思っていましたが、直美の育ちや背景に関することが明らかになっていくにつれ、「この人は生きるために手段を選んではいられなかったんだ」ということがわかってきました。
実際、お芝居で樹里ちゃんが演じる直美と向き合うと「もう、素直じゃないんだから」と可愛かわいくて仕方しかたがないです(笑)。本当はとても優しい子なのに、言葉の選び方で損をしていたり、素直になることで自分の心がさらけ出されてしまうのが怖くて、自分を過保護に守っているところがあったりするんですよ。すごく強いはずなのに、実はものすごく弱い。そこが直美の魅力だなと思っています。

それに、直美の“放っておけなさ”は、樹里ちゃん自身が持っている優しさがにじみ出ているからこそ生まれているものだと思っています。「これは樹里ちゃんが演じないと、台本だけでは見えてこない直美だな」と日々感じています。

――上坂さんの印象は?

最初にお会いしたときから、透明感があって柔らかい雰囲気の中に、内に秘めた強い思いを感じていました。きっと直美と重なる部分があるんだろうな、と。樹里ちゃんは英語のセリフにかなり苦労したと思うのですが、撮影が進む中で直美が壁にぶつかりながら成長していく姿と、樹里ちゃん自身が長文の英語のセリフを必死に練習して乗り越えていく姿が、重なって見える瞬間がありました。りんとして、見上愛として、直美や樹里ちゃんと向き合う瞬間がどんどん増えていて、さらにどんな化学反応が起きるのか、とても楽しみにしています。

――見上さんの、上坂さんへの“愛”が伝わってきます。

年齢が5歳違うのですが、自分が20歳のころを考えると「こんなに人と話せていなかったな」と思うんです。現場で、自分が疑問に思ったことをどう伝えるか、どう聞けば相手に届くかを、私は20歳のときはそこまで考えられていなかったなと。でも樹里ちゃんは、言わなきゃいけないことをしっかり言えるし、相手の意見を聞いて、そっちのほうがいいと思ったらすぐに切り替えられる柔軟さもあって、それが本当にすごいと思います。これから年を重ねていったら、どんな俳優になるんだろう? って、すごくドキドキしますね。


当時の最先端のナース服にも注目してください

――看護婦養成所での物語が本格化していますが、ナースを演じるにあたって意識していることを教えてください。

とにかく、たくさん看護稽古をしています。包帯の巻き方やシーツの敷き方など、本職の看護師の方に教えていただきながら、みんなで練習しています。ナイチンゲールを研究されている先生の講義も受けましたし、撮影中も随時、看護指導の先生に教えていただいています。

――ナースの衣装については?

私はやっぱり、トレインドナース(正規に訓練された看護師)になったときのナース服が好きですね。看護婦見習いになったときの衣装も、まだ着物が主流の時代に、明らかに最先端をいった洋服になるので、そこも楽しみにしていただけたらうれしいです。


絶妙なバランスの看護婦見習い生たち

――看護婦養成所のメンバーについてはいかがですか?

本当に奇跡のメンバーだなと思うくらい、絶妙なバランスです。ひとりひとりと話しても楽しいんですけど、全員が集まったときに生まれるグルーヴ感が唯一無二で。役柄としての関係性と、ご本人たちの性格がうまく重なって、誰か1人でも欠けていたら絶対生まれなかった空気だなと感じています。全員が、すごく面白いんですよ。

同じ生徒といっても世代差がありますし……。養成所では、工藤トメ役の原嶋凛さんが18歳でいちばん年齢が下なので、撮影の合間に最近流行はやっているものを教えてもらっています。みんなで「えー、今、そんなのが流行っているんだ!」って盛り上がっています。

――看護婦養成所を経て、やがて病院での勤務も始まります。実際に撮影が進んでどんなことを感じますか?

看護という概念が生まれ、日本に伝わり、広まっていく過程を描く物語です。看護がまだ当たり前ではない病院や、広まり始めたばかりの病院を、撮影の中で、疑似的ではありますけれど体験できることは、とても貴重な経験だと思っています。

看護師という職業について改めて気づくことも多くありますし、看護という仕事が生まれて本当によかったなと、心から思います。そういう時代に生きている今の自分自身も、とても恵まれていて、すごくありがたいことだなと感じます。

これからは、見たことのないような医療器具もたくさん登場します。当時のものが残っている場合もありますし、資料しか残っていないものは、スタッフさんが一から作ってくださっています。そうした細かい部分にも注目していただけたらうれしいです。