秀吉に重用された、近江国生まれの戦国武将・石田三成を演じるのは、大河ドラマ初出演となる松本怜生だ。小一郎(仲野太賀)と藤吉郎(池松壮亮)が、豊臣家に若い家臣を増やすために行った選抜テストを経て、藤吉郎の家臣となった三成。まだ16歳と若い三成だが、後には25歳の若さで五奉行の1人となり、豊臣政権の中核を担っていくことになる。今回、オーディションで三成役を勝ち取った松本に、石田三成という武将への思いや、共演する仲野と池松への印象を聞いた。


三成は何かに集中すると、他のことが見えなくなる

――第18回での初登場は、三成自身がオーディションのような形で豊臣軍に加わるという設定でした。

びっくりというか、面白いですよね。三成が初対面で秀吉の心をつかんだ「三献のお茶」という有名なエピソードがあるのですが、試験で選ばれたという設定は新鮮でした。視聴者の方にもわかりやすいでしょうし、新しいキャラクターが登場した楽しさもあると思うので、とても「豊臣兄弟!」らしいなと感じました。

「三献の茶」三成が寺の小姓時代、喉が渇いた秀吉に「ぬるめ・中くらい・熱め」の3杯の茶を工夫して出し、心を掴んだ。秀吉が三成を召し抱えるきっかけになったと言われる。

――三成をはじめ、藤堂高虎たかとら(佳久創)、平野ながやす(西山潤)、片桐かつもと(長友郁真)という個性的な4人が登場しましたが、撮影はいかがでしたか?

それぞれ違った第一印象を見せたいという思いは4人とも一致していて、それを限られたシーンの中でどう見せるのかを考えていました。返事の順番やちょっとした動きで個性が出るよう意識して演じました。僕は1番年下なのですが、皆さんとても優しくて、提案にも一緒に向き合ってくださいました。

――自分の禄(給与)を半分にしてもいいから、全員を採用してほしいと秀吉を “調略”するシーンは、三成の人柄がよく表れていました。

その直前に「兄のためにも降りるわけには参りませぬ」と言っていたので、兄の顔は頭に浮かばないのかなとも思いました(笑)。でも、秀吉に対してあんな提案をしたら、自分が不合格だと言われてもおかしくないわけで。だから、三成は本当に目の前のことしか見えていないと感じました。目的を達成するためなら後先を考えない、信念に忠実でぐな人間なんだと思います。

――三成が高虎に抱えられるシーンも印象的でした。

座禅したまま抱えられているのが面白いですよね。撮影前に、佳久さんに「可能であれば、座禅のままがいいです」と相談したら、「いけるよ」って(笑)。初対面だったのですが、何度も抱えていただいて。本当に高虎役が佳久さんでよかったです。ああいうユーモアのあるシーンを「豊臣兄弟!」で演じるのが楽しみだったので、初登場回からできたことがうれしかったです。


石田三成役に選ばれたのは、父親の直感のおかげ!?

――今回、ご自身も三成役にオーディションで決まったそうですね。

大河ドラマはずっと目指していましたが、まだまだ遠い場所だと考えていました。ただ、連続テレビ小説「おむすび」(2024年度後期)に出演させていただいて、「次は大河ドラマに出たい」と言ってもいいのかな、と(笑)。初めて大河のオーディションを受けられた時点で、もう合格するくらい嬉しかったんです。正直、受かるとは思っていなかったので、あまり緊張もせず、どこか吹っ切れた感覚でオーディションに臨むことができました。

――そして見事、石田三成役に決定したんですね。

三成はとても有名な武将なので、もっと経験豊富な方が選ばれるだろうと思い込んでいました。でも、なぜか父だけは「もし受かるとしたら三成だ」と言っていて、その直感が当たりました。

――三成への印象が変わりましたか?

もともとは「冷静で賢い武将」というイメージで、あまり好きな武将ではありませんでした。でも、三成のことを深掘りしたり、ゆかりの地を訪れて話を伺ったりしていくと、すごく若いことに驚きました。40歳で亡くなっていますし、秀吉への忠誠心や理想を貫こうとした姿勢も、若さゆえだったのかな、と。妥協できずに周囲と摩擦が生じてしまったり、1人ぼっちになってしまったり。今は、戦国時代を1番必死に生きた人物だったんじゃないかと思っています。

――三成を演じる上で、何か工夫していることはありますか?

三成はクールな武将であってほしいという戦国ファンが多いと思うので、クールなのは大前提として、その中でこれまでの三成とどんな違いを見せるか、そこに工夫が必要だなと思っています。コメディーシーンも多いので、そういう時にいじられたり、可愛かわいげのある三成を見せたりできたらいいですね。真っ直ぐな人ってどこか抜けていたりもするから、そういう緩急をつけていきたいです。

――石田三成の扮装ふんそうをした自分を見た時はどんな印象でしたか?

幼い! と思いました。三成が初めて登場した時は16歳という設定なのですが、僕は今年26歳になります。僕自身、若く見られることが多いので、そこは合っているのかなと思いました。まげや衣装は職人の方々に仕立てていただいているので、これで石田三成になりきれなかったら、それは僕のせいだなって気が引き締まりました。


仲野さんと池松さんとの共演は、自分はまだまだだと思い知らされることばかりです

――小一郎役の仲野太賀さんと藤吉郎役の池松壮亮さんとの共演はいかがですか?

毎日が本当に刺激的です。覚悟はしていたのですが、自分はまだまだだと思い知らされて。おふたりは、常にお芝居の話をされていて、撮影量が多くても熱量が全く落ちない。本当に血の通った人物として目の前に存在しているように感じます。共演する時間1秒1秒を大事にしたいです。

――現場で学ぶことも多い?

第18回で三成が殿(秀吉)に調略をしかけるシーンで、演技に迷って、ドライとテストで演じ方を変えてみたんです。池松さんに、どちらが三成らしいですか? と伺ったら、すごくしんに意見をくださって。エキストラの方にも背景を丁寧に説明されていて、全員で素敵すてきな作品を作るという姿勢に感動しました。だから、僕も分からないことはどんどん質問していきたいと思っています。

――八津弘幸さんの脚本を読んだ印象をお伺いできますか?

登場人物たちの信念とか思いをすごく大切に書いてくださっているので、史実として答えがわかっていても、先が楽しみになるというか、気になるんですよね。人と人の思いを丁寧に書いてくださっているから、こういう思いで決断したんだなとか、ここでこう思っていたんだなとか、登場人物にすごく感情移入してしまう。そういう魅力的な脚本の中で、自分も自然に演じたいなと思っています。

――最後に視聴者の方にメッセージをお願いします。

石田三成という大きな名前を背負うので、注目されている部分も少なからずあると思います。皆さんの期待には応えたいですし、僕なりの三成を演じたいです。「豊臣兄弟!」は、激動の戦国時代を舞台にしながら、人の思いや、人と人とのつながりを大切に描いている作品。幅広い世代の方に愛してもらえるよう、精一杯せいいっぱい向き合っていきたいと思います!