嵩(北村匠海)が本格的に詩を書き始めました。八木(妻夫木聡)は会社に出版部門まで作って全面バックアップ。その八木と蘭子(河合優実)の間に生まれた感情は……?
一方、のぶ(今田美桜)の少女時代を演じた永瀬ゆずなさんが再登場。木曜日、嵩の家を訪ねてきた小学生のファン・中里佳保でした。なかなか強烈な女の子でしたが、この子はつまり……?
金曜日は「やさしいライオン」で泣かせてもらいました。やなせたかしさんの詩もたっぷりの一週間を振り返ります。

もちろんネタバレですのでご承知おきください。


「美しいものを美しいと思う心、悲しみに寄り添う心。これは全ての人の心に響く、叙情詩だ」

時は東京オリンピック。昭和39年の10月。
テレビで見ながら「これが平和というもんながやね」というのぶ。
「ずっと続くといいな」と嵩。
そこで蘭子が「でも昨日まで普通やったのが突然始まる。それが戦争やき」とつぶやく。

いつもの喫茶店で嵩と健太郎(高橋文哉)、たくや(大森元貴)が打ち合わせを始めた。
アニメーションの主題歌を作ることになっているが、どうも嵩に元気がない。
健太郎たちが心配すると、嵩は封筒から1枚の絵を取り出した。
あの、あんぱんを手に持って飛んでくる太ったおじさん(初期のアンパンマン)の鉛筆画だ。健太郎「なんね? このおいちゃんは」
嵩「ぼくの考えるヒーローだよ。これを出版社に持ち込んだんだけど、けちょんけちょんに言われた」
「これは、ヒーローじゃなかやろ」と健太郎、
「これはおじさんですね」とたくや。

嵩「おなかかせた人に、あんぱんを配って回るんだよ」
たくや「あ、あんぱん屋のおじさんですか?」
嵩「あ、でも、お金はもらわない。困っている人を助けるために」
健太郎「よか人かもしれんけど、かっこ悪かよ」
嵩「かっこ悪いヒーローがいたっていいじゃない。カミさんは気に入ってくれてるんだけどな」
健太郎「え~? のぶさんが? いやいやいや、これは売れんばい。ヒーローはかっこいいもんっち決まっとろうもん」
ねるように、絵を封筒に戻しながら、
嵩「どうせぼくが作ったキャラクター売れませんよ」
たくや「そんなことないです。柳井さん売れっ子だし」
嵩「あ、じゃあ、ぼくの漫画の代表作、言ってみてよ」
言葉に詰まるたくやと健太郎だった。

うちに帰ってきた嵩をのぶが励ます。
出版社の人が認めてくれなくても、嵩さんが描きたいと思うものを描き続ければ、いつか日の目を見るかもしれないから、と。揚げ物(多分トンカツ)をしながら、
のぶ「誰がなんと言おうと、私はそのおんちゃん好きっちや。嵩さんらしくて」

おもむろに詩を書き始める嵩。日付のない日記のような、他人に見せるものではない、といいながら。
「ボクは、愛する/あなたを キミを/トンカツを」

場面代わって登美子の茶室。
「『オバケのQ太郎』、『リボンの騎士』……いま空前の漫画ブームみたいね。あぁ、いつになったら嵩は手嶌治虫先生(眞栄田郷敦)みたいな売れる漫画を描くのかしら」
登美子は容赦がない。
のぶは、きっと母はそういうだろうと嵩が言っていた、と笑った。
他の仕事で忙しくしている、と言うと、
登美子「漫画家をやめて、作詞家になったらどうかしら?……六原永輔(藤堂日向)さんみたいな、流行歌の作詞家になってくれるかしら?」

嵩が喫茶店で女性編集者と打ち合わせしていると、メイコ(原菜乃華)が娘と入ってくる。
打ち合わせについてはのぶに秘密にして欲しい、と嵩に頼まれるが……メイコは2人の様子を見て、何か勘ぐっているらしい。

やがて、のぶの誕生日。「あんぱんのバースデーケーキ」(ちょっと見たことがない!)でお祝い。蘭子からは登山帽、メイコからは“Nobu”としゅうされたハンカチが贈られる。
夫の健太郎が忙しくて……とこぼすついでに「嵩さんだって、外で何しゆうかわららんで」とメイコ。喫茶店の内緒ないしょ話をしゃべってしまう。

と、そこへ嵩が帰ってきて誕生日のプレゼントに1冊の本を手渡す。
『ぼくのまんが詩集』
誤解はすぐに解けたようだ。蘭子とメイコにも詩集を手渡しながら
嵩「ぼくの回りの大事な人たちと、いつもそばにいてくれるのぶちゃんのことを思って書いたんだ」

詩集は蘭子を通じて八木の事務所、九州コットンセンターにも届いていた。
八木は笑いながら嵩に「何なんだ、あのへんな詩は」
「お前の詩は子どもでも馬鹿ばかでもわかる……わかりやすいと言ってるんだ。美しいものを美しいと思う心、悲しみに寄り添う心。紙芝居もそうだったが、実にお前らしい。これは全ての人の心に響く、じょじょう詩だ……
お前はもっと詩を書け! そうだ、湯飲みや皿にお前の詩と絵をいれるんだ!」
と早速工房の手配を始めた。
「お前は何も考えないで、とにかく詩を書け!」

シャボン玉が飛ぶ長屋の軒先で、のぶが読む、嵩の詩。

ちいさなてのひらでも
しあわせはつかめる
ちいさな心にも 幸福はあふれる
私の指をしめらせて
こんなに雨はふるけれど
にぎりしめた手の中に
ほんのちいさなしあわせがある


「これまで出会った人たちが、ぼくの詩のなんだよ。寛伯父さん、千代子伯母さん、ヤムさん、千尋、あと、死んだ父さんも」

さっそく、嵩の詩と絵がついたカップが出来上がって、のぶはそれで紅茶を飲んでいる。
「嵩さんの言葉は人を元気にするがじゃない?」
嵩「そう言ってくれてうれしいよ」

喫茶店で健太郎とカレーを食べながら、突然、紙ナプキンに鉛筆で詩を書きつける嵩。
八木が発案した、嵩の詩が書かれた皿やカップはどんどん売れているようだ。
経理も手が回らなくなり、蘭子が手伝っている。

会社には今でも子どもたちが訪ねてくる。
手に手に自作のカードを持って八木に見せに来ていた。
子どもたちを、ぎゅーっと抱きしめる八木は幸せそうだ。
嵩には「もっともっと詩を書け」という。

無理しないで、というのぶに、嵩は
「大丈夫。漫画を描くみたいに言葉がどんどん浮かぶんだ。これまで出会った人たちが、ぼくの詩の源なんだよ。寛伯父さん(竹野内豊)、千代子伯母さん(戸田菜穂)、ヤムさん(阿部サダヲ)、千尋(中沢元紀)、あと、死んだ父さん(二宮和也)も。みんなの顔を思い浮かべると、言葉がどんどん浮かぶんだ。あふれてくるんだよ、どんどんどんどん。もちろん、のぶちゃんのことも」

やがてある日、八木が宣言する。
「出版部門を作るぞ。わが社最初の作品は、やないたかしの詩集だ」
異を唱えようとした粕谷(田中俊介)に対して
「戦争を経験したおれたちの会社の目標は何だ? 人を幸せにすることだろう? そのためにはまず、優しさや思いやりの気持ちを広げたい。あいつの詩にはその力がある」


「ぼくは愛する あなたを キミを トンカツを」

いつものように八木の仕事を手伝っていた蘭子が、帰りがけに
「子どもたちにプレゼントを渡すとき、いつもあんな風に抱きしめてあげるんですか?」
と聞く。
八木「ああ。この世の中で子どもたちが生きていくのに必要なのは、まずは栄養のある食べ物、住まい、そして音楽に物語に詩」
蘭子「精神の栄養ですね。つらいことがあってもそれがあれば乗り越えられます」
八木「もう1つ必要なのは……人の体温だ。あの子たちは親から無条件に与えられる、ぬくもりを知らない」
蘭子「八木さんはこれまで何百人という子どもたちを抱きしめてきたんですね」
八木「そういうことになるかな」
蘭子「そういう八木さんを、誰か、抱きしめてくれる人は……すみません、変なこと聞いて。失礼します」
去っていく蘭子。
蘭子は自分の気持ちに困っている表情。部屋に残された八木も……。

「愛する歌」を書く嵩。詩の下には絵も添えられる。

ボクは愛する
あなたを キミを
土を 水を
トンカツを
愛することが 
うれしいんだもん (一部略)

それを見た八木はほほんで
「これは素晴すばらしい叙情詩だよ。メルヘンだ」
「メルヘン? ぼくの詩が?」
「その答えは読んだ人が見つけてくれる。柳井、お前の詩集を出そう。そのために出版部を作った。詩集のタイトル、考えてくれるか?」

こうして詩集『愛する歌』がいよいよ出版されることになった。
お祝いは、嵩の愛する「トンカツ」だ。

出版記念のサイン会は、なぜか女性下着売り場の中……だった。


「泣きたいとき 私 がまんするの 私は泣くのが似合わないの」

蘭子はアパートの部屋で八木の言葉を思い出していた。
口紅を引くためにのぞき込んだ鏡台の脇には、豪(細田佳央太)の半纏はんてんが今も掛かっている。

蘭子「てのひらのうえに あわいかなしみがこぼれる にぎりしめれば うすあおく そのてのひらに にじむ とおいおもいで」

「愛する歌」は重版が決定した。
八木は、第二集を出すからもっと詩を書け、と電話してきた。
嵩「のぶちゃんは、何で驚かないの?」
のぶ「売れると思ってたから。だって、こんなにわかりやすくて素敵すてきな詩はないもの。大人も子どもも声に出して読みとうなる詩やき。よかったね」

のぶと嵩のやり取りを見ていたメイコが、健太郎への不満を打ち明ける。
メイコは健太郎が自分をかえりみてくれないことが悲しいのだった。
「おしゃれして、健太郎さんと歩きたい。……うちらぁが一番きれいやったころ、口紅も塗れんかった。ワンピースも着れんかった。男の人らあが町からおらんなって、うちはモンペはいて、防空ぼうくうごうの穴ばっかり掘りよって。やき、うち、母親になっても、おしゃれして健太郎さんと町を歩きたいが。どればぁウキウキするがやろ」

放っておけないのぶと嵩はそのことを健太郎に話すが……。
嵩「愛してるって言えば?」
健太郎「そげなこと、言えんめえもん。顔から火が出るばい」
嵩「でも伝えないと」
健太郎「じゃあ、柳井君から代わりに伝えてくれん?」
のぶがイラっとして立ち上がり、嵩の詩集を持ってくる。
ページを開いて「これ、メイコの詩やと思う」
嵩は“メイコみたいにいつも笑顔の人の悲しい気持ちを書いた”と言った。

えくぼの歌

泣きたいとき
私 がまんするの
私は泣くのが似合わないの
私は えくぼがあるから
悲しいときも笑ったような顔になるの
いつもにこにこ うれしそうねと
みんな言うけれど
えくぼのてまえ がまんしてるの
ひとりでこっそり泣けば
私のえくぼに たまる涙

ひとり喫茶店で「えくぼの歌」を読んでいたメイコのところに現れた健太郎。
健太郎「おれ、ホント、ふうたんぬるか男でごめん」
深々と頭を下げ
「泣きたいときはおれの胸で泣いてほしか。おれが涙ば受け止めるけん」
「健太郎さん」
「メイコ、きれいだ。一番きれいだ」
ようやくメイコと名前で呼んでもらってうれしいメイコだった。


「柳井さん。孫にも私にも、生きる力をくれて、ありがとう」

嵩のもとには読者からファンレターも届くようになった。
小学生の女の子からも。差出人の名前は「中里佳保」 嵩はこの少女と手紙のやりとりを始めた。(あ! もしかして、このエピソードは?)

数週間して、その佳保が祖父・砂男(浅野和之)とともに嵩を訪ねてくる。
長屋の柳井家の玄関で無言になり
「家があんまりボロだから、固まってただけ」なかなか辛辣しんらつな子だ。
(さすがに、中園ミホさんがこんな少女だったとは思ってません、はい)

上がってお茶を、というと
「サイダー、ないの?」
さらにあんぱんを出すと
「おじいちゃん、わたしいらない。……だって、お客さんが来たのにケーキとかじゃなくてあんぱん出すんだよ? お金なくて大変なんだよ、きっと」
さらに嵩の詩について「いままで、詩は難しいもの、と思ってたけど、この程度なら私にも書けるかもと思って嬉しくなった」
そしてサインが欲しい、と色紙を出すと「漫画も描いて。代表作、描いて」。
困る嵩。「そっか、ないのか」と佳保。
机にあったあんぱんを持った太ったおじさんの絵を指さしたが、「全然売れなかった」と嵩。
その後も次々に辛辣な言葉をぶつけ、全てに関して「なんで?」と聞く佳保。

そこにちょうど蘭子が帰ってきた。のぶは、私はサイダーを買ってくるから、と佳保を蘭子にパス。

アパートの階段下に腰かけて、サイダーを飲みながら映画の話をする2人。(さすが蘭子! ちゃんと盛り上がっている)
『ローマの休日』の新聞記者のジョー(グレゴリー・ペック、でしたね)を「お父さんにちょっと似てるんだ」と言ったあと、寂しそうに下を向く佳保。

家の中で、砂男が嵩とのぶに言う。
「実は、あの子は最近辛いことがあったんです」と話し始めた。
「あの子の大好きな父親が少し前に亡くなりましてね。しばらくは泣いてばかりおりましたが、ある日偶然、あなたの詩集を読んで、少しずつ元気になって。父親を亡くして以来、外に出かけたいとあの子から言い出したのは、これが初めてなんです」
「あなたは、孫の心を動かしてくれた。心から感謝しております」

のぶは、嵩も自分も、佳保くらいの年頃に父を亡くした経験があると話す。
「私もあの時、嵩さんの絵に救われました。嵩さんの絵や言葉は不器用に見えるけどあったかくて。いつも心のどこかに寄り添ってくれて。嵩さんの作るものにはいろんな人との出会いや別れが詰まっているからなのかもしれません」
嵩「なにか、少しでもお役に立てたなら、あの詩集を出してよかったです」
砂男から「戦争は?」と聞かれ、嵩は中国に、と短く答える。
砂男「あなたの書く詩には喜びの裏にどうしようもない悲しみがにじんでる。きっと大変なご経験をされたんでしょう」
嵩「忘れることはないと思います」
砂男「柳井さん。孫にも私にも、生きる力をくれて、ありがとう」
深々と頭を下げるのだった。

蘭子と佳保は「てのひらのうえのかなしみ」が好きだ、と言った。

てのひらのうえに あわいかなしみがこぼれる
にぎりしめれば うすあおく 
のひらににじむ とおいおもいで
まばたいてすぎた なつかしい愛の日
ゆびさきにいまものこる しあわせなおもいで

最後に嵩は預かっていた色紙を渡した。
嵩のサインと、中央に描かれていたのは佳保の似顔絵だった。
照れた佳保が
「これ、わたし? 似てないなぁ」
さっき見た、太ったあんぱんのおじさんは、なんか好きだった、といった。
最後に「やないたかし先生、めげずに描きなよ!」と言って佳保と砂男は帰っていった。
「ほいたらね」という言葉を覚えて。
※中園ミホ 振り返りインタビュー


「書きたいと思うなら、書いた方がえいで。今がそのときやないが?」

昭和42年になった。2人は新しい住まいに引っ越した。
マンションには嵩専用の仕事部屋と茶室がある。
羽多子(江口のりこ)は上京して同居することになった。

その羽多子が、かかってきた電話にうっかり出てしまったため、嵩は明日の朝までにラジオドラマの脚本を書く仕事を引き受けることになった。

嵩が取り出したのは、昔、書いたお話「やさしいライオン」。
ライオンの子“ブルブル”と、育ての母親・犬の“ムクムク”のお話だ。
やなせたかしさんの絵本『やさしいライオン』の絵をそのまま使う形で嵩がストーリーを語る。
(これは条件反射的に泣いてしまうので、ここにストーリーは書けません。ごめんなさい)

語り終わって、嵩が
「いつか、このドラマの続きを書きたいと思っていたんだ。でも、書いていいのかな」
のぶ「ためらっているの? 子どもと、お母さんの話だから?」
嵩「ぼくには、ふたり母さんがいるだろ? 育ててくれた伯母さんと」
のぶ「本当のお母さん」
嵩「あの2人がこのドラマを聴いたら、どう思うかな? 傷つくんじゃないかな」
のぶ「書きたいと思うなら、書いた方がえいで。今がそのときやないが?」
嵩を励ますように見上げるのぶ。……そして嵩は一晩でドラマを書き上げた。

ラジオドラマ放送の夜。
嵩とのぶは家で2人で、八木、蘭子、そして登美子、千代子(戸田菜穂)もそれぞれの場所で聴いていた。
もう1人、ラジオを聴いていた人物がいた。それは……手嶌治虫。

のぶ「終わり方、書き直したがやね」
嵩「うん、メルヘンになっちゃったけど」
のぶ「すごく素敵や。ブルブルとムクムク、どこまでも飛んでいけるとえいなぁ」
ふたりが見上げる先には満月があった。
そこに、背中に犬を乗せて空を飛んでいくライオンの絵が重なった。


今週は、幼いころに亡くした父、2人の母……のぶと嵩、それぞれが抱きしめてきた想いを昇華させるような場面が続きました。
次週は「ぼくらは無力だけれど」。予告にはヤムおじさんの姿や、手嶌治虫の姿も見えました。ドラマもあと1か月! みんなの行く末を見守りたいと思います。
ほいたらね。