いよいよ本日から放送が始まった連続テレビ小説「ばけばけ」は、松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描いている。「怪談」を愛し、外国人の夫とともに、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語で、ヒロイン・松野トキを演じるのは、髙石あかり。彼女に、朝ドラへの想いや作品の魅力を聞いた。
トキは自分にすごく似ているので、それも含めて運命だったのかなと思います
──今回、2892人の中から、オーディションでヒロインに選ばれました。ヒロインとして出演が決まった時の、率直なお気持ちをお聞かせください。
目の前が真っ白になって、とにかく泣きました。感情がぐちゃぐちゃになって……。というのも、小学生の時、俳優になりたいと言っていた私に、当時の先生が「朝ドラでヒロインを演じているあなたを見たい」と言ってくださって。それ以来、いちばんの夢だったんです。それが叶うなんて信じられない、ものすごい衝撃でした。
実は、撮影が始まってからもしばらくは、全然実感がわかなくて、現場に向かいながら「あれ? これ本当に朝ドラの撮影に行くのか?」と考えたりしていたくらいでした(笑)。

──朝ドラヒロインのオーディションは、「舞いあがれ!」「あんぱん」に続く3回目の参加だったとのことですが、今回は何か印象的なことはありましたか?
全部が印象的でした。はじめの書類選考からして、お題が「“化ける”という言葉を使ってエッセーを書いてください」でしたから! これは一味違うぞって思いました。ただ、それまでの2回も、最終審査に呼んでいただけたところまでは同じだったので、あまり期待はしていなかったんです。悔いは残らないようにはするけど、自然体でいこうと思っていました。
ところが、その最終審査が楽しくて……! 審査員に向かって演技をする、というスタイルではなくて、ワークショップのような形だったんです。その雰囲気がとってもよくて、ああ、このスタッフの方々とお仕事ができるなら、どんなに楽しいだろう、少しでも長く時間をともにしたい、という気持ちになったんです。そんな思いになったのは初めてでした。
──そんな憧れのヒロイン、トキを実際に演じてみて、いかがですか?
トキというキャラクターは、すごく私に似ていてまず驚きました。私が普段思っているようなことを言ったり、私と同じような立ち回り方をしたりするので、違和感が全くなく、お芝居はとてもやりやすいです。自分で言うのも恥ずかしいですけど、そういうのも含めて、運命的な出会いだったのかなと感じています。
──具体的には、トキのどんな部分がご自身に似ているのでしょうか?
トキが生まれた家は没落士族で貧乏、暮らしもきびしい。そんな状況でもトキは、周りの人を決してないがしろにはしません。家族のせいで大変なトラブルが起きても、それを恨みはするけど、縁を切ることはしないんです。むしろ、家族を守るために懸命に働く。でも、それを不幸と背負い込んだりはしません。そんなところが似ていると思います。
私自身、家族や、周囲の人とのつながりは大切にするタイプで、家族を守りたいという気持ちが強いので、わかるなあ……、と思いながら演じています。毎週ひとつは、共感できるセリフが出てくるんですよ。これって、私の気持ちと同じだ! って思えるような。誰かを守ることができる強さを持つ、かっこいいトキと自分が似ているところがあるというのは嬉しいですし、そんな役を演じられるのも幸せだと思います。

ずっと笑いながら、楽しみながら演じています!
──撮影現場の雰囲気はいかがですか?
そもそも、「ばけばけ」は脚本が最高に面白いんです。ここまで笑いながら読める台本、なかなか出合えないって思うほど。だから、演じている私たちもずっと、笑いながら、楽しみながらやっています。撮影中、ほぼ9割がそうですね。
それも、変にギャグっぽい演技をするわけじゃなくて、ずっと真顔で面白いことを言っているイメージ。面白いことを無理に仕掛けにいこうとするのではなく、自然な会話の中に笑いがあるんです。このお芝居をものにすることができたら、きっとすごく強い武器になるんじゃないかなと思っています。今回は、名だたる俳優のみなさんに支えられて、撮影が終わる頃には一皮むけて“化ける”ことができるよう、頑張りたいです。
──松野家のメンバーと共演してのご感想は?
本読みの段階から、すでに松野家らしい空気が出来上がっていて、最高でした! 父上役の岡部(たかし)さんは本当のお父さんみたいだし、おじじ様役の小日向(文世)さんも明るくていつも楽しいですし、母上役の池脇(千鶴)さんとは、だんだん顔も似てきているような(笑)。もともとの脚本が面白いところに、このみなさんが肉付けをされるので、よりそれぞれの色が出て、面白くて憎めないキャラクターに……。松野家は、見ていて絶対楽しいと思います。注目していただきたいです。
──のちに夫となるヘブンを演じるトミー・バストウさんの印象はいかがでしたか?
お会いする前から「トミーさんは、出会った人を全員メロメロにしてしまう人だ」とうかがっていたのですが、まさに、でした(笑)。紳士的で、すごく優しくて、そしてとにかく日本が大好きなんです。そこは、ちょっとヘブンさんに似ていますね。お芝居でもすごく助けていただいていて、頼れる存在です。これから、楽しみにしていてください。
本当に朝ドラか? と思うくらい暗い照明だけど、だからこそできる芝居がある
──トキとヘブンは、“怪談”を愛する夫婦ですが、髙石さんはいかがですか?
好きです! あまり怖がりでもないですし。トキは「怖い」という感情も含めて楽しんでいるようですが、私の場合は純粋に物語として楽しんでいるタイプですね。
例えば、お墓に対しても怖さを感じることはなくて、今回、出演が決まってから、雑司ヶ谷霊園にある小泉八雲さんとセツさんのお墓にも行きました。ご挨拶だったり、ご報告だったり。しょっちゅう行っていますが、お墓が怖いと思ったことはないですね。

――第1話の冒頭で、トキがヘブンに怪談を語る場面は雰囲気が出ていましたね。こだわって撮影されたのでしょうか?
なんと言っても、照明とセットです。怪談にはシチュエーションも大切ですから。普通、セットの家というのは上から照明を入れるために、天井が外れるようになっていたり、そもそも天井がついていなかったりするんです。あとは、撮影がしやすいようにちょっと中が広くなっていたり。でも今回はリアルにこだわっているから、当時の家をそのまま再現したかのようなセットが建っています。
特に松野家は貧乏なので、めちゃめちゃ狭いし、暗いし、埃がすごいんです! セットに入る前には着物にまで埃をまとわせるほどのこだわりぶり。着物を叩いたらふわっと埃が舞うようになっていて……正直、撮影がつらいです(笑)。でもそういったところも、作品のリアルさを底上げしていると思います。
そして照明に関しては、常に本当に朝ドラか? と思うくらい暗いのですが、だからこそできるお芝居もあるので、すごくいい環境で撮影をさせていただいているなと思います。
──「ばけばけ」の放送を楽しみにしている視聴者の方にメッセージをお願いします。
どう伝えたらいいかわからないくらい素晴らしくて、とにかく早くみなさんのもとに届けたいと、自信を持って言える作品になっています。
つらい境遇にあって、「うらめしい」毎日を送っているトキが、それでもしっかり前を向いて、家族や周りの人々と面白おかしく生きている様子を見て、クスッと笑っていただけたら嬉しいです! ぜひ、ご覧ください!