「CQCQ*1、こちらはJA0ゼロ△×○、お聞きのステーションありましたら、QSO*2願います。どうぞ」。これは40年以上前、長野局時代に楽しんだアマチュア無線の呼びかけです。当時は車に無線機を積みマイクやスイッチをセット、渋滞にはまると「当方国道○号線を北上中、渋滞情報をいただけますか?」と呼び掛ければ近くを通過中のハム(アマチュア無線家)が「××で事故、△△まで○分」などと知らせてくれました。またコールサインの数字は地域を表すもの、当時0地域*3の私が5ファイブ地域(四国)に出かけて呼びかければ現地のハムは「おっ、信越方面からの旅人か?」と応じてくれました。

*1 不特定の相手を呼び出すための符号。
*2 ハムの略符号で「交信」のこと。
*3 信越(長野、新潟)地域。

私が無線に興味を持ったのは中学生、五球スーパーなどを組み立てていたラジオ少年のころでした。夜の闇を彼方から渡ってくる短波放送、その間にも楽しそうなおしゃべりが。「これがハムか⁈」と憧れて免許を取るために通信教育開始、しかし父の転勤と高校受験のため、あえなく中断。その後はほかにも興味が移り、無線とは縁遠くなりました。

しかし入局5年、仕事も落ち着いてくると昔の思いに明かりがともり「電話級アマチュア無線技士*4」の資格を取って、肩掛け式の無線機で松山局時代まで細々と楽しんでいました。

*4 現在の「第四級アマチュア無線技士」。

そして月日は流れ、最近またまた思いが再燃、早速専門誌を買いに走りましたが、“パソコンを介しての通信”? “ハムのための通信衛星”? など新しい通信方法や用語などちんぷんかんぷん。何せブランク30数年の“浦島太郎”です。ともあれ秋葉原電気街の専門店を数軒訪ねましたが、今浦島には分からないことだらけ、頼みの綱、「深夜便」の技術スタッフも「アマチュア無線ですか……」。そうですよネ、携帯電話(スマホ)で瞬時に世界とつながる今、無線機のダイヤルを回して相手を探すなんて時代遅れでしょうか? でも無数に飛び交う電波の海から同好の士と出会うなんてロマンチックでしょう。玉手箱を開けたからにはネットサーフィンや秋葉原を彷徨さまよって情報収集ですね……。

(とくだ・あきら 第1・3・5日曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年9月号に掲載されたものです。

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