現在放送中の、連続テレビ小説「ばけばけ」。松江の没落士族の娘・小泉セツと、外国人の夫・ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに紡ぐ“夫婦の物語”です。

花田旅館の女将おかみ・花田ツル役の池谷のぶえさんから、ドラマについての感想や、役についての思いを語ったメッセージが届きました。


はなツル役 池谷のぶえ

平太とともに花田旅館を切り盛りする女将さん。トキのことをとても可愛かわいがっている。
カラッとしたたくましさが、トキの心の支えになっている。

【池谷のぶえさんのコメント】

――ご出演が決まった時のお気持ちを教えてください。

脚本家のふじき(みつ彦)さんとは昔からの知り合いで、面白い舞台作品をよく拝見していたので、「ばけばけ」を書かれるとニュースで知って、楽しい作品になりそうだなと思っていました。
小泉八雲さんのことも、(劇団の)イキウメの舞台『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』を観劇して気になっていたので、気になるふたつが合体する面白そうな朝ドラだと思っていたところにお話をいただき、作品に関われることがとてもうれしく、ワクワクいたしました。
これまでに出演した朝ドラ( 「瞳」「ひよっこ」「半分、青い。」 )はどれも東京のNHK制作だったので大阪局にお世話になるのは初めてですが、なぜか「おかえりなさい」という雰囲気がある温かい現場です。

――演じられる花田ツルはどんな人物でしょうか?

ツルはおトキちゃん(髙石あかり)がシジミを売りに来る花田旅館の女将です。おトキちゃんに対しては、まるで自分の子供のような気持ちもあるんだろうなあという気がします。
おトキちゃんにとっては、家族に言えないことを言えたり、頼めないことをお願いできるような、家族とは違う手助けを求められる存在でしょうね。私自身も祖母の家に行くと親に対するのとはまた違った甘え方ができたような気がするので、おトキちゃんにとってのツルもそういう感じではないかと思います。

トキ役の髙石あかりさんとは「はじめまして」です。りんとしていながら、とても柔らかく自然体でその空間にいらっしゃいます。まだお若いのにすばらしいですよね。

平太役の生瀬(勝久)さんとは何度もご一緒していて、リスペクトと信頼があるので、お芝居については何ひとつ相談していません(笑)。ツルと平太に楽しいことを求めていただいている空気感をたぶん生瀬さんも感じてらっしゃるはずなので、コミカルなことは積極的にやるようにしています。

ツルはヘブン先生(トミー・バストウ)とのシーンも割と多い役です。初めは「ちょっと困りますよ、異人さん」という感じですが、次第に積極的にまでは行かずとも、平太さんよりは受け入れるようになっていきます。もしかしたらおトキちゃんとヘブン先生の関係に何か予感めいたものを感じているのかもしれないですね。

ヘブン役のトミーさんは「こういう感情だったらこうした方がいいんじゃないか?」などと、積極的にご相談されている印象です。「ここはヘブンが靴のまま上がった方が面白いんじゃないか」と提案されたり、ユーモアあるアイデアも持ってらっしゃるすてきな方です。

――収録された中で印象的だったシーンを教えてください。

とても印象的で大好きなのが、おトキちゃんとおフミさん(池脇千鶴)がシジミを売りに来るシーンです。シジミはむき身と殻つきの2種があってお2人はお高い方のむき身を買ってほしいわけなんですけど、それを見せてくださるふたりの姿がなんとも言えず、「むき身を買うよ〜!」という気持ちになりました。ちっちゃいシジミをこんなにむくのは、そりゃ大変だ!と思うほど、すごい量のむき身だったんです(笑)。あのむき身のアップを撮ってほしいぐらいでした。きっと2人で怪談を話しながら、朝までむいていたんでしょうね。

それから、阿佐ヶ谷姉妹さんのへびかえるのナレーションもとても好きです。松江で八雲さんが住んでいたお家を見に行ったら、書斎の前のお池でカエルがゲコゲコ鳴いていたので「だから蛙がナレーションなんだ!」と納得しました。お庭にはちゃんと蛇もいるらしいですよ。蛙と蛇が2人の暮らしをずっと見守っていたんだなと思いました。

――視聴者の方々に作品の見どころとメッセージをお願いします。

おトキちゃんとヘブン先生の人生が軸ですが、その周りで生きていた人たちの人生もほんわかと温かく描かれ、やさしい作品になっています。
「ばけばけ」というタイトルには怖いイメージもあるかもしれませんが、そんなことはありません。ふじきさんの脚本の、日常を本当にそのまま大切に大切に紡いでいる感じがとてもすてきなので、ドラマをご覧いただく時間も温かく、いいひとときになるんじゃないかと思っております。ぜひご覧ください。


【物語のあらすじ】
この世はうらめしい。けど、すばらしい。

明治時代の松江。まつトキは、怪談話が好きな、ちょっと変わった女の子です。
松野家は上級士族の家系ですが、武士の時代が終わり、父が事業に乗り出すものの失敗。とても貧しい暮らしをすることになってしまいます。
世の中が目まぐるしく変わっていく中で、トキは時代に取り残されてしまった人々に囲まれて育ち、この生きにくい世の中をうらめしく思って過ごします。
極貧の生活が続き、どうしようもなくなったトキのもとに、ある仕事の話が舞い込んできます。
松江に新しくやってきた外国人英語教師の家の住み込み女中の仕事です。外国人が珍しい時
代、世間からの偏見を受けることも覚悟の上で、トキは女中になることを決意します。その外国
人教師はギリシャ出身のアイルランド人。
小さい頃に両親から見放されて育ち、親戚をたらい回しにされたあげく、アメリカに追いやられ、居場所を探し続けて日本に流れ着いたのでした。
トキは、初めは言葉が通じない苦労や文化の違いにも悩まされます。ところが、お互いの境
遇が似ている事に気が付き、だんだんと心が通じるようになっていきます。しかも、二人と
も怪談話が好きだったのです!
へんてこな人々に囲まれ、へんてこな二人が夜な夜な怪談話を語り合う、へんてこな暮らし
が始まります――。


2025年度後期 連続テレビ小説「ばけばけ」

毎週月曜~土曜 総合 午前8:00~8:15ほか ※土曜は一週間の振り返り

作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
出演:髙石あかり、トミー・バストウ/吉沢亮 ほか
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史、小林直毅、小島東洋

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