昨年末にやっと心が通じ合った松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)。連続テレビ小説「ばけばけ」も後半に突入することになり、改めてヒロイン・松野トキを演じる髙石あかりに、トキを演じる上での心境の変化や、思い出の名場面、これからの見どころについて話を聞いた。
少しでも時間があれば散歩に出て外の空気を吸う
──ようやくヘブン先生(トミー・バストウ)とお互いの気持ちを確認できましたね。ここまでにも紆余曲折あったトキですが、長く演じていく中で何か意識の変化はありますか?
これほど長い期間、一人の人物を演じるのは初めての経験なのですが、今は、その日々に馴染んでいます。トキは私にとってすごく自分自身に近いと感じるキャラクター。だから、「役を演じる」というよりも、そのシーンやその時々の状況に応じて生まれた感情を、自分の感覚に沿って表現しているような気がします。もちろん「演技」ではあるんですが、これまでにない初めての感覚なんです。逆に言えば、このお芝居は、ほかの作品ではもうできないかもしれない。「ばけばけ」だから、トキだから生まれる空気感なのかなと感じています。

──とはいえ、撮影も長丁場になってきました。疲れた時のリフレッシュ方法はなんですか?
トキやヘブンさんと同じで、お散歩です(笑)。今はなかなか遠くまで出かける時間は取れないですが、自然が好きなので少しでも時間があれば散歩に出て外の空気を吸うようにしています。日光を浴びたり、風にあたったりするだけでも、ちょっとリフレッシュできます。あとはお料理です。自炊をするだけで、素の自分や自分の時間を取り戻せる感じがするんです。そうやって体を動かすことで、生活のリズムを保っています。
──現場の雰囲気はいかがですか? 松野家のみなさんとは、家族のような空気感だそうですね。
松野家のみなさん全員が「人と一定の距離感」を持っていて、それをずっと保てていることが今の空気感を作り出している理由かもしれません。冷たいからじゃなく、相手への思いやりや尊敬が常にあるからこその距離感です。
そのベースがある上で、だんだんと感情をオープンにしたり、意外な一面が見えたりするのが楽しくて。この間も、みんなで同じオリジナルTシャツを着て盛り上がったり……(笑)。そういう時間がすごく嬉しいです。
──松野家はコミカルなお芝居も多いですよね。司之介(岡部たかし)が髷を落として落武者のような頭になったシーン(第2週第9回)は最高でした!
あの落武者シーンは、確かにすごく楽しくて、現場も盛り上がりました。でも、お芝居中は、不思議と私は笑わずにいられたんです。だって、その時はもう完全に「トキ」になっていたので。父のあの姿に、面白さよりも「私のためにそこまでしてくれたんだ」という衝撃や嬉しさのほうが勝っていて。だから、お芝居の中では自然と受け止められました。ただ、久しぶりに放送で見た時には、やっぱりちょっと笑っちゃいましたけど(笑)。
銀二郎さんとの再会で気づいたこと

──前の夫・銀二郎(寛一郎)さんとの再会もありました。やはり心は揺れましたか?
銀二郎さんは、トキにとってずっと心の中にあった「宝物」のような存在です。再会できると知った時は、トキとしても私としても「めちゃくちゃ会いたい!」と思いました。
でも、いざ再会して再プロポーズされた時、トキの中に、言葉にできない「引っかかり」が生まれたんです。
もしヘブンさんと出会っていなければ、その場ですぐにOKをしていたかもしれません。それくらい大切な人でしたから……。でも、その時、怪談を聞いているヘブンさんの顔が頭をよぎったのかもしれません。その「モヤモヤ」に気づいてしまったこと自体が、トキがヘブンさんを選んだ理由だったのだと思います。
──そのヘブンさんへの思いに、トキはいつ、気づいたのでしょうか? いつ頃から、意識し始めたと思いますか?
2人をより近づけ、引き合わせたのは「怪談」です。トキにとっては、怪談を人に語れることも、あんなに熱心に聞いてもらえることも、嬉しくて仕方なかった。自分の人生のピークだって思えるくらい、毎日ヘブン邸に行くのが楽しみだったんです。
そこからは少しずつですけど、まずは銀二郎さんとの再会、さらに大きなきっかけになったのがイライザさん(シャーロット・ケイト・フォックス)です。彼女がやってきて、「寂しい」という感情が芽生えた時に「これってなんだろう?」ってトキは思った。それを橋の上で考えていたら、どんどん気持ちがたかぶってきて……。この撮影の時、全然カットがかからなかったんです。「ばけばけ」ではよくあることなんですが、ずっとカメラが回っていて、やがて「あ、私はヘブン先生のことが好きなんだ」って気づいた瞬間に、涙が出ていました。
でも、台本には「泣く」とは書かれていないんです。割と、演じる側の自由にさせてくれているというか。だからこそ、あの「スキップ」をどう演じるか、それぞれ苦労したりしたんですけどね(笑)。
トミーさんとは、お互いに全幅の信頼を置いている

──ところで、トミー・バストウさんとは、撮影を通じてどのような関係性を築かれていますか? 当初から、何か変化はありましたか?
とてもうまくいっています。今は「夫婦」を意識することすらなくなって(笑)、もう、役を一回置いた「戦友」や「パートナー」のような関係です。トミーさんは日本語がすごくお上手ですし、もし言葉が通じない瞬間があっても、「あ、今通じてないな」とお互いに感覚でわかります。言葉以外の方法で伝え合ったり、呼吸を合わせたり。最初からお芝居の息は合っていましたが、最近は、撮影以外の場面でもそれを感じられるようになりました。お互いに全幅の信頼を置いている、そんな安心感があります。
──これから、2人の物語がいよいよ始まりそうです。モデルとなった小泉八雲・セツ夫妻について、改めて感じることはありますか?
私はずっと、八雲さんの破天荒な部分を支え続けたセツさんに惹かれていました。そして、ふと考えてみたら、トキもまた、ヘブンさんに対して、それに近い愛情や「守りたい」という気持ちを抱いていることに気づいたんです。少しずつでも、あの理想の2人に近づけていたらいいなと思います。
──最後に、これからの見どころを教えてください。
これから、2人の思いが試されるような大きな壁が立ちはだかります。でも、2人の絆は絶対に揺るぎません。お互いを支え合う瞬間は、台本を読んでいても、演じていても様々な感情がわき、強く胸を打たれました。皆さんにも、それをお届けできたらと思っています。