2015年にスタートした「京都人のひそかなたのしみ」は、京都人の持つ独自の価値観や美意識をドラマとドキュメンタリーで描くNHK BSプレミアム「ザ・プレミアム」の人気シリーズ。

いよいよ明日1月4日(日)から待望の第3シリーズがスタートする。テーマは「継承」。
物語の舞台は、240年の伝統を誇る京都屈指の老舗和菓子屋・はるのぶ。常盤貴子演じる“京都人の中の京都人”沢藤三八子みやこがパリに去ってから8年…… 穂志もえか演じる新たなヒロイン・三上みやこがはるばるパリから京都の地に舞い降りる。洛に託された大きな使命とは……?

主演の穂志もえかに役に込めた思いや、京都・パリでの撮影について聞いた。


エースが日替わりで私の前に現れるような現場

——三上洛は京都で生まれて5歳からパリで暮らし、ソルボンヌの大学院で哲学を専攻しているという役柄ですが、役づくりはどのようにされたのですか?

撮影の準備をするときはできるだけ役と同じ状況に身を置くのが好きなので、今回は哲学の本を読んでみました。今まで哲学には興味がありながらも触れてくることがなかったので、学ぶ機会にもなって楽しかったです。

一方で、20年パリで育ったという役は、フランス語が話せるのはもちろん、中身もほぼフランス人ということなので、限られた準備期間の中でどこまでその要素を取り入れられるか難しさもありました。

たまたま昨夏にロンドンに留学に行っていたのですが、そのときに出会った若いパリジェンヌに今の流行はやりやパリジェンヌらしい仕草しぐさを教えてもらって、できる限りのことを取り入れたつもりです。また、洛の知識欲のあるところ、すぐに納得せずに本質を探そうとしたり、常に内省しながら生きているところは私と似ているな、と共感しながら演じています。

——本作の監督は「TRUEトゥルー COLORSカラーズ」でご一緒された源孝志さんですが、穂志さんにとってどんな監督ですか?

天才肌でカリスマ性がある方ですね。また「まなざしを持っている人」だと思ってます。人や物事を多角的な視点からまっすぐ深く見つめる力がある。登場人物にもそのまなざしが向けられているので、すべてのキャラクターに人生を感じますし、魅力的に描かれています。

源監督の作品を初めて見たのは「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」(2021年)だったんですが、こんな風に瑞々みずみずしく感情を捉えられる方がいるのかと衝撃を受けたことを覚えています。現場で疑問が生じたときも、明確で納得のいく答えを導き出してくださる素晴らしい監督で、ご一緒できて本当にうれしく思っています。

——人気シリーズというだけあり、ベテランの役者さんたちの中でヒロインを演じられるわけですが、現場はどのような雰囲気なのでしょうか。

大御所の方ばかりなのに、なんと言えばいいか、皆さん「普通」でいてくださるんです。私も気を張らずにお話しさせていただける、すごくありがたい機会をいただいています。

みなさんタイプや活躍の場がそれぞれ違って、例えるなら各球団のエースが、日替わりで私の前に現れる、みたいな感じです。バラエティ豊かで豪華なキャスティングに、日々刺激をいただいています。

——銀粉蝶さんや常盤貴子さん、渡辺謙さんに学ぶところはありますか?

洛の祖母・沢藤鶴子を演じる銀粉蝶さんは、テイクごとに全然違う演技をされるんです。何パターンも演技があって、見ていて楽しいし勉強になるのですが、ご本人は「同じことができないだけよ」とおっしゃいます。動物的な感覚をお持ちなのかな、とご一緒していて楽しいです。

常盤貴子さんは、すごくオープンなスタンスでいてくださって、初日から緊張せずにお話しさせていただきました。京都のことにも詳しくて、今度器を作るワークショップに一緒に行こうと話しています。台本でも三八子さんは洛のことを京言葉で「あんた~」と呼ぶので、そういう雰囲気でどんどん打ち解けているんじゃないでしょうか。

洛の大学院の教授役の渡辺謙さんは、現場での視野の広さがすごい。どのカメラにどこまでどう映っているかとか、わかっていらっしゃるんだと思います。


何不自由なくパリで暮らしていたのに、遠く離れた日本で継承問題に向き合うことになる

——今回は「継承」がテーマですが、穂志さんは継承についてどのように考えますか?

長く続くものほど継承する人に重圧がのしかかってくるのかなと、本作を通して感じるようになりました。後継者不足で伝統工芸や文化が消えて行ってしまうという話を耳にします。あまりに惜しいな、と思います。時代の移り変わりだから仕方しかたない面もあるのかもしれませんが、この作品を通して「残すべき価値のある素晴すばらしいもの」の発見と、それを「残していくべきだ」という気持ちが伝わっていけばいいなと思っています。

——洛は第1話で大きな決心をします。それはどのような心境だったのでしょうか?

洛はパリでずっと哲学を勉強してきたのですが、「このまま学問だけやっていていいのだろうか」と感じていたと思います。そんな風に迷っていたとき、人生を変えるかもしれない話が舞い込み、自分が必要とされる場所、やるべきことがある場所を選びます。

和菓子は京都文化の重要なパーツのひとつ。失うのはあまりにも惜しいという気持ちと、自分の生きがいを見つけた、という気持ち、銀粉蝶さん演じる祖母や義母の三八子さん、父親の三上すぐる(石丸幹二)との関係の中で、いろいろなことが重なっての決心だったのだと思います。

——洛という人の魅力はどんなところだと感じますか?

何不自由なくパリで暮らしていたのに、遠く離れた日本で継承問題に向き合う。その肝の座り方はすごいな、と思いました。そして使命を受け入れ、先のことは決めずに流れるように生きる。たおやかに生きられる姿は強いですよね。いろんなことに向き合う力がある人だな、と感じます。

——フランス語のセリフがりゅうちょうですが、元々得意なのですか?

いえいえ、今回の作品で勉強しました。今も絶賛特訓中です。パリロケのときに現地のスタッフさんにダメだしされながら(笑)撮っていたくらいです。どうにかみなさんのサポートを受けながら頑張っている、という感じです。

——京都ロケが長かったと思いますが、京都の印象はいかがですか?

実は修学旅行で行ったくらいだったのですが、アメリカの配信ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』に出演させていただいた際に、京都からカツラ技師さんが参加されていて、帰国してから京都を案内していただきました。観光というよりも、季節ならではの楽しみ方や、地元の人がおすすめする場所に連れて行っていただきました。

今は撮影で滞在していますが、建物の間から山が見えたりして、私たちは自然とともに生きていることを実感します。ここで暮らしていたら、自然を慈しむ美学が育つだろうな、と。

撮影でもそういった情景は大切にされていて、たとえば沢藤家のセットの中庭にも、造花ではなく生きた植物が植えられています。室内の温度も植物に合わせられていて、役者が寒くても植物が枯れないようにとか、紅葉が色づくようにと温度を下げていました。そういうこだわりが詰まったところも見ていただけたら。

——洛を演じられて、ご自身が成長したと感じることはありますか?

まず、連続ドラマの主演が初めてなので、それが自分にとってすごいこと。そしてフランス語のセリフ、京都弁のセリフで演じることもよい経験になりました。

また、洛が哲学や文化人類学を学び、パリという多様性のある街で育ったというキャラクターなので、固定観念をもたないというところは、私自身にも芽生えつつあるかなと。国や文化に対して、開かれた心を持てるようになったと思います。

そして何より、素晴らしいキャストの方々とスタッフのみなさんと一緒に駆け抜けたことは、無意識のところで何かを乗り越える力になっていると思います。


プレミアムドラマ「京都人の密かな愉しみ Rougeルージュ―継承―」
(全9話)

2026年1月4日スタート
毎週日曜 NHK BS/BSP4K 午後10:00~10:45
翌土曜 NHK BS 午後11:30~0:15(再放送)

※第1話のみ1月10日午後2:45~NHK BSでも再放送

作:源孝志
演出:源孝志、西山太郎、玉木雄介、西片友樹
音楽:阿部海太郎
出演:穂志もえか、常盤貴子/石丸幹二、森田想、杉田雷麟、秋山菜津子、銀粉蝶/渡辺謙
(ゲスト)段田安則、山西惇、笹野高史 ほか

プロデューサー:森井敦(東映京都撮影所)、伊藤純(NHKエンタープライズ)
制作統括:川崎直子(NHKエンタープライズ)、樋口俊一(NHK)、八巻薫(オッティモ)

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