
織田信長(小栗旬)の重臣の一人で、戦上手として「鬼柴田」の異名で恐れられた柴田勝家。信長から目をかけられ、足軽から出世していく小一郎(仲野太賀)と藤吉郎(池松壮亮)を快く思わない勝家は、ふたりを毛嫌いするようになる。史実では、のちに豊臣兄弟と激しく対立することになる勝家を、山口馬木也はどのような思いで演じているのか。
勝家はブレない人だけど、彼の強さの裏にある弱さも探っていきたい
――桶狭間の戦いでも、勝家は「鬼柴田」の名に相応しい勇猛な戦いぶりでしたが、出演決定時に勝家を「演じてみたかった憧れの武将」とコメントされていましたね。
ずっと前から、自分の風体や声質が勝家としてイケるんじゃないかなって思っていたんです(笑)。それに、もし武将のカードゲームがあったとしたら、勝家ってどうしても持っておきたい1枚というようなイメージがあって、一度は演じてみたいと考えていました。
――今作で描かれる勝家についてはどんな印象をお持ちですか?
脚本の八津弘幸さんが勝家をどのように描いていくのか、僕にもまだわからない部分もあるので、今は探っているところですね。小一郎と藤吉郎と分かり合える何かがあるのか、信長様に可愛がられているふたりへの嫉妬心から反発するのか、これからどのような勝家が描かれるのか、僕自身も楽しみにしているところです。

――信長の家臣の中でも勝家はかなり存在感のあるキャラクターです。勝家という人物をどのように演じたいと考えていますか?
かれこれ25年近く役者をやっているのですが、僕はいまだに役作りっていうものがわかっていないので、そこは床山さん(かつらなど、髪を結い上げる職人)と衣装さんに作り込んでいただいています。髪型や眉毛を工夫したり、これまでになかったデザインの豪華衣装を用意していただいたり、ビジュアルから目立ってやろうという姑息な手段で(笑)。あとは現場に立って、相手の俳優さんと対峙した時のインスピレーションを大切に演じたいです。
史料などを見ても、勝家はブレない人という印象なので、奇を衒ったり、別の角度からということは考えていないのですが、ただ、人間は表があれば、当然裏もあるわけで、そこは探っていきたいと思っています。これだけ勝家に強さが出るということは、逆にどこかにすごく脆い、崩れやすい部分があるかもしれないですから。
――所作などの面では、勝家らしさを意識している部分はありますか?
その瞬間瞬間で気を付けていることはあります。自分ならこう動きたいところを、勝家だったら、もっと直感的に動くのではないか、この所作は必要ないんじゃないか、とか。それが功を奏しているのかどうかは、まだわからないですけど。でも、信長様が後ろに控えている時にはあまり勝手はできないので、前に出過ぎないようにして、豊臣兄弟とのシーンではふたりの前に立ちはだかる壁になれるよう、思いきり勝家節を出していければいいかなと思っています。
仲野太賀さんと池松壮亮さんの演技に脅威を感じています

――小一郎を演じる仲野太賀さんの座長ぶりはいかがですか?
現場での太賀さんはいつもニコニコしていて、みんなのことを気遣ってくれて、そういった意味でも非の打ちどころのない座長なんですけど、いちばん強く感じるのは、やはり役者としての表現力が素晴らしいということ。彼の演技を見ていると、この作品は必ず面白いものになると確信できる。そこに惚れてしまうというか、そういう牽引力がいちばん強いような気がします。
そして、太賀さんと池松壮亮さんの演技が最高なんです。ふたりのやりとりを見ているだけで幸せな気持ちになる一方で、ふたりの演技に役者として脅威を感じることも。おふたりがあの年齢であんなにすごい芝居ができてしまうのを目の当たりにして、これって勝家が豊臣兄弟に感じていた脅威とちょっと近いんじゃないかと思うんですよね。
――具体的に、おふたりの芝居に脅威を感じたシーンがあったのでしょうか。
第4回の信長様から小一郎たちが草鞋をもらうシーンですね。その時に心を射抜かれました。だからこの先、おふたりと演技する時には、その気持ちを大事にしようと思っています。

――勝家が仕える織田信長を演じる小栗旬さんの印象はいかがですか?
信長の持つカリスマ性みたいなものを、俳優としての小栗さんにもすごく感じています。僕は小栗さんって芝居を感覚的に捉えるタイプだと思っていたんです。でもご本人曰く、全部頭で理解しないと前に進めないタイプだそうで。信長も感覚的な人と思われがちだけど、実際にはすごく緻密に計算をしていたことが随所に感じられるので、そういうところも小栗さんは信長に近いんじゃないでしょうか。
――桶狭間の戦いの前の軍議で勝家の発言は信長から無視されたり、勝家は信長から冷遇されているわりに、信長に心酔しているように感じます。勝家は信長のどこに魅力を感じているのでしょうか。
そうなんですよ、信長様はなんであんなに勝家に冷たいんでしょう?(笑) 勝家は信長様にカリスマ性や人智を超えた力みたいなものを感じているのですが……。昔、信長様ではなく弟の信勝(中沢元紀)を織田家の後継者にしようと動いた負い目が、その思いに拍車をかけているかもしれないですよね。あの時代、男が男に惚れるっていうのはシンプルに「憧れている」ということだと思うんです。程度の違いはあるでしょうけど、この人のためならなんでもできるという思いは今の時代にも通じるものなんじゃないかな。
「豊臣兄弟!」の登場人物は、現代に生きる私たちとリンクする

――八津弘幸さんの脚本を読んで、どんな印象をお持ちですか?
史実はもちろん変えられないんですけど、そこに向かう日常、人間の部分が丁寧に描かれていて、非常に楽しく読ませていただいています。この時代は何度もドラマとして描かれてきましたけど、今までとはちょっと違います。豊臣兄弟をはじめ、ふたりのまわりの人々のキャラクターや人間性が、現代に生きる私たちとリンクする描かれ方をしているんですよね。大河ドラマには歴史を伝えるという責任もありますが、この作品はそれだけでなくて、見ている人にちゃんと人間の物語が伝わる脚本だと思うし、太賀さんと池松さんがそういう芝居に特化したおふたりで、すごく面白くなるんじゃないかと感じています。
――戦国武将を演じられて、戦国時代に生きることの大変さを感じますか?
いつ、どんな時でも自分の命を捨てなきゃいけない、死と隣り合わせで生きるというのはどういうことだろうって考えました。撮影で甲冑を着たんですが、こういうものを着て、自分は死ぬかもしれない、相手を殺すかもしれない場所に出向いていくのは、大変という言葉だけでは括れないですよね。この格好で何日も過ごす、その辛さを突破するためには、自分に信念や志がないと無理です。その思いは一体何だったんだろうと想像しています。ただ戦に勝つだけではなくて、自分の近い人を守りたかったのかもしれないし、この国を良くしたいという思いだったのかもしれないんですけど、自分が想像するよりも大きな思いがないと、この甲冑を何日もつけられないと感じました。
――山口さんご自身は、勝家と豊臣兄弟はどのような関係になっていくと思いますか?
僕らは歴史で何が起きるかは知っていますけれど、勝家たちはこの先に何が起きるかわからない。豊臣兄弟に対して腹が立つからどなりつける。それ以上でも以下でもないと思うんです。腹が立つから、てめえ、この野郎!っていう、それだけで(笑)。ただ、芝居で対峙した時におふたりから受け取ったもの、俳優としての才能であったり、ひらめきであったり、美しさであったりっていうものは大事にとっておきたいなと思っています。おふたりの演技からリアルに感じたものを勝家として表現していけたらいいんじゃないでしょうか。