りん(見上愛)の幼なじみ、虎太郎が帝都医大病院に現れた。背広に身を包み、かつての栃木ことばもすっかり消えている。偶然りんと再会し、虎太郎は元気のないりんを見て励ますも、どこか気持ちがすれ違っているようにも見える2人。そんな虎太郎を演じる小林虎之介に、撮影への思いを聞いた。
虎太郎としてちゃんと驚けるように、自分の出演シーン以外の展開はあまり知らないほうがいい
――虎太郎がりんと偶然病院で会いますが、さらに洗練され、まるで別人のようでした。
そもそも服装が変わりましたからね。でも、別人になり過ぎないように意識して演じました。とはいえ、少し成長した感じも出したいし、虎太郎らしさもなくしたくない。標準語でしゃべる虎太郎と昔の虎太郎とのバランスは難しかったです。

――なくしたくない、虎太郎の良さとは、どんなところでしょうか。
真っ直ぐで素直で、芯が曲がっていないところでしょうか。りんへの想いも含めて。「東京に出て努力すれば、成功できる」と信じている、その強さは大事にしたいと思いました。
――その成功への思いが、りんの気持ちとすれ違っているように見えました。
そうなんです。虎太郎は東京に出て製薬会社で働くようになって、「部下が5人もいて……」とりんに得意げに話しました。さらに部下を失って落ち込んでいるりんに対して「成果が上がらないのは、その人に力がないからだ」「りんのせいじゃない」と、励ますつもりで言いましたよね。でも、りんは「(その人の)努力じゃどうにもならないこともあって」と虎太郎に言い返していて……気持ちのすれ違いに気づいてない虎太郎、なんともかわいそうなシーンでした。
――そのあたりの役作りはどのように?
虎太郎が出演するシーン以外の台本を、あまり深く読み込まないようにしています。帝都医大病院でりんに久々に会った一連のシーンも、僕自身も最初、すれ違いだと気づいていなかったんです。監督にあとで「女心がわかっていないすれ違いのシーンだから」と聞いて、初めて「そうなんだ!」と気づいたぐらい。なので、虎太郎の反応はある意味、僕の素の状態なんです。

僕自身が背景をいろいろ理解して「虎太郎、かわいそうな状況だな」と思ってしまうと、お芝居にそれが出てしまいそうなので、あくまでも虎太郎の目線を大切にしています。たとえばシマケン(佐野晶哉)の存在も、小林虎之介として「おいおい、あの男は何者?」と素で驚ける状況にしておきたかったんです。
りんも直美も「看護婦になってる!」

――久しぶりに現場に入られて、りんや直美(上坂樹里)の成長は感じられましたか?
ふたりとも看護婦の衣装になっていたので、「おぉ、『風、薫る』のポスターの人だ」って(笑)。りんは東京に出て、さらにしっかりしていましたが、栃木ことばも少し残っていて、虎太郎よりも気持ちはまだ故郷にあるんだな、とも感じました。
上坂さんは、クランクインの時よりずっと元気そうに見えましたね。直美という役が、当初より今の方が晴れやかだからかもしれません。
――では、ここからの見どころを教えてください。
りんと虎太郎の関係に関しては、やはり「気持ちのズレ」ですね。物語も大きく動いていく中で、虎太郎自身も変化していきますので、その成長の過程を見届けていただけたらと思います。