主人公の豊臣秀長(仲野太賀)は、天下人・豊臣秀吉(池松壮亮)の弟で、「もし秀長が長生きしていれば、豊臣家の天下は安泰だった」とまで言われた天下一の補佐役。天下統一という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描く下剋上サクセスストーリーだ。制作統括の松川博敬チーフ・プロデューサーに、仲野太賀をはじめとしたキャスティングに込めた思いを聞いた。
主人公の秀長役は仲野太賀一択でした
――主人公の小一郎に仲野太賀さんを起用した理由を教えてください。
「豊臣兄弟!」の企画が決まって、脚本の八津弘幸さんをはじめとした初期のスタッフとともに、主人公・豊臣秀長役を誰にオファーしようかという話し合いの場を持ちました。そうしたら、満場一致で仲野太賀一択だという話になったんですよね(笑)。兄の秀吉が誰に決まったとしても、仲野太賀が秀長であれば大丈夫だよねって。仲野太賀さんの魅力は、大きな物語を預けられる俳優だということ。大河ドラマは制作期間が長いし、多くのスタッフが関わる看板番組。それを背負って立てる若手俳優って限られると思います。

――主演に仲野さんが決まってからの兄である秀吉の人選だったと思うのですが、最初は池松壮亮さんが演じると聞いて少し意外な印象もありました。
確かにそうですよね。池松壮亮さんとは彼がまだ10代の頃に「風林火山」(2007年放送)という大河ドラマでご一緒したことがあります。それ以来、出演作品をずっと見てきましたが、ナチュラルで体温が低いお芝居を巧みにされる俳優という勝手なイメージがありました。なので、池松さんが我々のイメージする秀吉を演じてくれるのか不安でしたし、出演オファーを受けてくれた後も、監督陣も僕も彼がこの脚本を本当にやってくれるのか、実は心配だったんです。でも、池松さんはわれわれの予想を見事に裏切って、イメージのさらに上をいったものすごくハイテンションな秀吉を作り上げてくれました。それは僕らにとっても挑戦だったけど、池松さんにとっても挑戦だったと思うんですよね。
――今作のキャスティングについて意識されたことはありますか?
有名な戦国武将がたくさん登場しますが、キャラクター造形において、既存のイメージを少し裏切るということを考えています。キャスティングにおいても、ちょっとイメージをずらすことで生まれる面白さがあるといいなと思います。俳優の皆さんのインタビューを聞いていると、「私が本当にこの役でいいのか」みたいなことをよくおっしゃっているんですけど、まさにその感想が狙いどおりで、キャストの皆さんには今作の役に対して新たなチャレンジをして欲しいと思っています。
――だからこそ、大河ドラマとしてはすごくフレッシュな印象のキャスティングだったのですね。
そうですね。この作品のキャスティングは、小一郎と藤吉郎の2人で50%くらい決まって、信長含めた3人が決まったら80%くらい座組が完成すると思っていました。だから本当に慎重に、長い時間をかけてこの3人のキャストを決めていきました。

――その信長役に小栗旬さんが決まったのはどのような理由があったのですか?
そこは、八津さんや監督陣と話し合って、物語の中で信長がどんな役割を担うのか、豊臣兄弟にとってどんな存在になるのか、何よりもストーリーを優先して考えた結果です。放送を見ていただけるとわかるのですが、信長役の小栗旬さんがキャストの最後にクレジットされる“トメ”なんですね。もちろん小栗さんは大河ドラマの主演経験もあるし、人気も実力も兼ね備えた名俳優ですけど、いわゆる大御所俳優ではないですよね。だから、小栗旬さんをトメに決めた時点で、この作品の枠組なり世界観が確立されるけど、我々としても覚悟を決めて、この座組で勝負しようと決意しました。
――物語の中で豊臣兄弟と対になる存在として、信長の妹の市が登場します。市を演じられる宮﨑あおいさんの起用理由をお聞かせください。
チーフ演出の渡邊と僕は、宮﨑あおいさん主演の「篤姫」(2008年放送)のスタッフだったので、宮﨑さんには今回の「豊臣兄弟!」で大河復帰を果たして欲しいと思っていました。信長役が小栗旬さんに決まった時点で、市役として出演オファーをしました。ご本人もおっしゃっていましたが、市ってスラッとしていてシュッとした女性というイメージがこれまであって、それを柔らかな印象の宮﨑さんが演じるっていうのが意外で面白そうかな、と思いました。
仲野太賀のためにひと肌脱ぎたいという俳優から逆オファーが続々と
――そこから、キャスティングは順調に決まっていったんですか?
今回、自分から出たいと言ってくれる俳優さんがすごく多くて。これも太賀さんの魅力の一つですが、キャスティングがすごくやりやすいんです(笑)。仲野さんが主演する大河ドラマにはひと肌脱ぎたいと思ってくれる人が本当に多くて。小栗さんも仲野太賀と池松壮亮の芝居を一番近くで見たいという理由で出演を決めてくださったり。
キャスティングを進めている間にもいろんな俳優さんからどんどん逆オファーが届くので、ちょっと待ってもらっていたくらいです。池松さんについても、彼と芝居をしてみたいって興味を持つ方がたくさんいて。それぞれの理由で、このふたりに引き寄せられるように人が集まってきたんです。それこそ、豊臣兄弟のように人を惹きつけるふたりのおかげで、プロデューサーとしては後悔のない布陣になったと自信を持って言えますね。
――実際に撮影が始まってみて、手応えはいかがですか?
仲野さんは、とにかく声がいい。セリフがちゃんと入ってくる。それはすごい長所だなと思います。それに、芝居が磨き抜かれているというか、きっと過去にいろんな監督にしごかれて、芝居の足腰がしっかりしている。やはり長いドラマを預けられる人だなと改めて確信しました。それにプラス、池松さんという天才がいて。彼の瞬間で見せる爆発力には驚かされます。さらに、このふたりが合わさった時のコンビネーションが想像以上に素敵ですね。仲野太賀と池松壮亮で「豊臣兄弟!」をやることになった運命に、日々心から感謝しています(笑)