大河ドラマ「豊臣兄弟!」の脚本を担当するのは、これまで連続テレビ小説「おちょやん」(2020年度後期)や大ヒットドラマ「半沢直樹」(2013年放送)など数々の話題作を手がけてきた八津弘幸。主人公・小一郎を演じる仲野太賀にはどのような思いを抱いているのだろうか。また、「今作はホームドラマ」と語る理由とは?

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太賀くんって真面目で一生懸命で、ちょっと秀長っぽいところがあると思うんです

――ついに第2回で、小一郎(仲野太賀)が武士になるために旅立ちました。藤吉郎(池松壮亮)とのシーンはグッとくるものがありました。

もちろん、脚本は毎回みどころのつもりで書いているのですが、小一郎のことを藤吉郎がもう一度誘いにくるところは、まずはここを見てほしいと思ったシーンでした。僕の中では物語の最初のつかみというか、ふたりの物語がここから始まるみたいな感じが伝わるといいなと思って、力を入れて書きましたね。あと、第6回は小一郎が藤吉郎のためにすごい熱量を持って動く回なので、そこも期待していただきたいです。

――最初に、主人公の秀長役が仲野太賀さんだと聞いた時はどんな感想でしたか?

秀長役が太賀くんに決まったと聞いた時は、もう最高の気分でした。打ち合わせの段階で「誰がいいですか?」と聞かれた時に、僕は「仲野太賀くんがいいです」って言ったんです。そうしたら、満場一致で「いいですね」ということになって。でも、太賀くんはお忙しいだろうから難しいかなと思っていたら、やると決めてくれたのですごくがたかったです。僕はずっと太賀くんと一緒に仕事がしたかったし、第一希望が実現するのはかなり奇跡的なことだと思うので、本当にラッキーでした。後日、太賀くんとご飯を食べに行った時に、太賀くんって思ったとおり秀長っぽいところがあるなと感じました。

――“秀長っぽい部分”とは?

一番は、すごく真面目で一生懸命なところですかね。だけど、それをあんまり人に見抜かれたくないみたいで、照れ隠しでちょっとチャラい感じを装っていたりするんですよね。でも、本当はすごく努力家だし、僕としては、実はちょっと繊細なところもあるんじゃないかなとも感じています。それでも、いざという時には実力を発揮する。すごく主人公感があるなという印象でした。

――実は秀長も熱いものを持っている人とおっしゃっていましたが、仲野さんも心に熱いものを持っていると感じますか?

そうですね。今回のオファーを受けるにあたっても、大河ドラマの主演を優先してスケジュール調整をしてくれたんだと思うんです。それに、大河ドラマの主演っていうのは、太賀くんの中では“成り上がり感”もあるんじゃないかな。それは僕としてもすごく共感できるところだなと感じています。最近はもう、みんなが太賀くんは素晴すばらしい役者だと思っているから、芝居に対してプレッシャーを感じているかもしれません。だから、今回はそこからたぶん2段階くらいギアを上げて演じてくれることを期待しています。

――実際に撮影現場は見学されたのですか?

撮影が始まったばかりのころ、1回ロケの撮影を見学させていただきました。現場でキャストの皆さんが演じているのを見て、セリフの言い回しやかけ合いなど、自分が思っていた以上に面白くなっているところがあって、すごくいいなと思ったし、自分の脚本の方向性も間違っていないんだなって実感できました。キャストの皆さんのテンションなど、僕が想像していたのとは違うところもあって、すごく刺激を受けましたね。

――演じる俳優の皆さんと、脚本やキャラクターについてお話される機会もあるのでしょうか。

よほどのことがない限り、僕から何かをリクエストすることはありません。制作サイドから役者さんの疑問が届くことはありますけど、そういう時はもちろんフィードバックするようにしています。ただ、自分の中では書いたものを役者さんに読んでいただいて、そこから役者さんにご自身で想像を膨らませてキャラクターを演じてもらった方がうまく行く気がしているんです。


「豊臣兄弟!」はホームドラマ!? 家族のシーンに込めた思い

――本編では、信長に仕える前の木下家(豊臣家)の何気ない普段の家族関係が描かれていました。制作統括の松川博敬さんも、今作は「ホームドラマ」でもあるとおっしゃっていますが、家族のシーンについてはどのような思いで書いていらっしゃるのですか?

松川さんが「ホームドラマ」とおっしゃったのは、間違っていないと思います。「豊臣兄弟!」っていうタイトルもそうなんですけど、ホームドラマらしい兄弟の絆や家族の温かさも楽しんでもらえたらいいなと思っています。もちろん、戦国時代の戦の数々も見どころではあるんですけど、豊臣家のシーンを楽しんでいただけたら、この作品のことを愛してもらえるんじゃないかなって思うくらい、家族のシーンは大事に書いています。

――一方で、小一郎と藤吉郎という豊臣家の兄弟以外にも、織田信長(小栗旬)と市(宮﨑あおい)という兄妹も登場しました。そこにはどういう意図があるのでしょうか。

今の価値観で言ったら、織田信長って相当ひどいことをやっていくキャラクターじゃないですか。それを肯定するという意味ではなく、彼の行動を裏付けるものとして、信長が抱えている孤独みたいなものは匂わせたい気持ちがあります。史実として、信長は弟の信勝(中沢元紀) を殺してしまうという流れがあって、信長にとっては市だけが自分の本音をさらけ出せる相手なんですよね。これはセリフで書くかどうかはわからないですが、この先、信長が藤吉郎を羨ましいと感じている様子を描きたいと思っています。自分は弟を殺してしまった過去があるから、藤吉郎が持つ家族や、小一郎という存在が羨ましい、そういう思いがあるんじゃないかと、今は漠然と思っています。

――これまで以上に信長を盲信している市のキャラクター構築には苦労されましたか?

すごく迷いました。「兄のために」とかたくなに思っていることも素晴らしいんですけど、人っていろいろな出会いによって変わっていくじゃないですか。のちに夫となる浅井長政(中島歩)との出会いも、それがいい方向に市を変えていくと思うんです。メッセージというと大げさですけど、例えば今、人間関係で悩んでいる人も、世の中には他にもたくさんの人がいて、いろんな人に出会う中で価値観がどんどん変わっていくということが伝わるといいなと思います。

――また、直(白石聖)をはじめとしたオリジナルキャラクターが本当に生き生きと動いていると感じます。

オリジナル部分に関しては、今までの作品とやっていることはそんなに変わらないのかなと思っています。史実として結末が決まっているから、そこを何とか盛り上げるためにオリジナルの話を加えるとか、一般的にはこう思われているけど、違う側面から見たらこうだったんじゃないかっていうような使い方でオリジナルの要素は入れるようにしています。僕の感覚としては、歴史という原作があって、それをアレンジして書いている感覚が少しあるんです。その史実が意味するものを大事にしながら、面白い見え方ができるといいなと思っています。あんまりやりすぎると、時代考証の先生に怒られちゃうんですけど(笑)。