
織田信長(小栗旬)に仕え、槍の名手として数々の武功をあげてきた前田利家。信長が開いた御前試合では、小一郎(仲野太賀)の小細工により勝ち上がってきた藤吉郎(池松壮亮)を打ち負かすが、次第に藤吉郎の実力を認め、よき友よきライバルとして出世争いを繰り広げていく。藤吉郎(豊臣秀吉)が天下人に駆け上がる中で大事なキーパーソンとなる前田利家を、演じる大東駿介はどんな人物と捉えているのだろうか。また、派手好きで“かぶき者”と言われた利家を演じる先に意識していることとは?
利家の生き方を見ていると、自分自身の背中を押されるんです
――演じる前田利家にはどのような印象をお持ちでしたか?
利家は歴史上の人物というより、少年マンガの登場人物のような経歴の持ち主で、そんな人物を演じられることに本当に興奮しました。
今回のドラマでは描かれませんが、利家は信長の元を追い出されたことがあるんですよね。それなのに何度も勝手に戦に参加して、敵の首を獲って成果を上げるけど、やっぱり信長には許されず、それでも諦めずに戦に行って実力を証明して、ようやく信長の元に戻ることを認められたという史実があって。自分もそのくらいの意気込みで走らなきゃいけないよなって、すごく自分自身の背中を押されるエピソードでした。
かぶき者で武闘派だった利家ですが、計算も得意で、前田家の家計も自分で管理していたそうなんです。それを知って、利家は今やらなければならないことに余計な雑念なく向き合えていた人なのではないかなと感じています。利家の生き方を見ていると、「大東も余計なことを考えるなよ、やるべきことをやればいいんだよ」と言われているような気持ちになるんです。
――前田利家については出演が決まる前から興味を持っていたんですか?
出演が決まってから利家という人に引き込まれて、もっと知りたいという思いが強くなっていきました。深掘りしていくと、こんな面白いことある? っていうぐらい魅了されて。それを自分の体で表現できると思うと、ものすごく興奮して、さらに次から次へと情報を集めていっている感じです。もう利家のファンなのかも(笑)。今年は利家に人生を指南してもらって、まだ見たことのない景色に連れて行ってもらいたいですね。
――そんな利家をどのように演じたいと考えていらっしゃいますか?
利家は藤吉郎のライバルであり、親友となっていくので、自然と懐に入っていくような人間になっていけばいいのかなと感じています。利家は急に木下家に現れて、憎まれ口を叩いているようで、実はすごい助言をするなど、ちょっとツンデレっぽくもあるんです。きっと利家は気持ちのまま動いていると思うので、余計なことを考えず、シンプルな気持ちのいい人として演じたいです。

槍の名手である利家の殺陣はこだわって作り上げました
――利家は「槍の又左」と言われるほどの槍の名手ですが、第5回の御前試合のシーンは見事な槍さばきでした。
利家を演じることが決まってから、「休んでるわけにはいかんな」という気分になって、常に鍛錬していました。利家は長さ5mの槍を使っていたという逸話もあるのですが、実は槍さばきが凄まじすぎて5mに見えていたということらしいんです。だから、ただパワーで押すわけじゃなくて、とても繊細な感性を持った人なのではないかなと思うので、あまり無鉄砲なトレーニングはしないように心がけました。大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺」(2019年)に出演した時、勝手にクロール選手役だと思い込んでクロールを1年練習したら、平泳ぎの選手だったということもあったので(笑)。
――槍さばきには苦労されませんでしたか?
そうですね。実際に撮影で使う槍と同じ、2mの長さの棒を持って帰って、家でも手に馴染ませるためにいつも触るようにしていました。他のキャストの皆さんも公園や駐車場で殺陣を練習していたそうなんですが、夜に木刀を持っていると、いろいろな意味で危ないじゃないですか(笑)。でも、その点、僕はただの棒なんで、ちょっとしたストレッチ棒やで~、みたいな雰囲気で公園でも練習しました。
――利家の殺陣にはこだわりがあったのでしょうか。
殺陣師の先生にいろいろリクエストさせていただきました。もちろん素晴らしい殺陣を作ってくださっていたんですけど、利家の性格からすると、小細工なしに会心の一撃をお見舞いしたいんじゃないかと思ったんです。何度も殺陣が続くより、一瞬の隙をついて力強い一発を込められたらいいなと思って作り上げました。

――御前試合のシーンでは、藤吉郎との殺陣もありましたね。
楽しかったですね。池松くんの俳優としての魅力は、共演する俳優を“連れて行ってくれる”っていうことにあると思うんです。彼と対峙すると、脚本に描かれているからじゃなくて、必然的にそこに向かうような佇まいでいてくれて。事前に手合わせする時間が少なかったので、「怪我するのが一番よくないから、そんなに早く殺陣はできない」って、池松くんが現場で言ってくれていたんです。ところが、本番になったらめちゃくちゃ早いんですよ(笑)。言うてることちゃうやん! って。でも、そういうところが本当にありがたくて、本番でいい緊張感が生まれるんです。本番で一番の到達点に連れて行ってくれる、それが印象に残っています。
仲野くんと池松くんからは、お互いへのリスペクトと信頼感を感じます
――今作の座長である仲野太賀さんとは、NHKのドラマ「拾われた男 LOST MAN FOUND」(2022年)でも共演されていましたが、印象はいかがですか?
太賀くんは魅力に溢れた俳優ですね。以前共演させてもらった時に、彼の人間としての熱量がものすごくきらめいていて、それが画面にも映っていると感じたんです。現場では大らかでいながら、締めるところはきっちりと締めてくれるし、無駄な力みもないのに、作品への濃縮した思いがちゃんとそこにある。純度が高くて真っ直ぐで信用できる人で、自分も彼の思いに応えたいと思わされます。でも、なんといっても、太賀くんと池松くんの関係性が今作のすべてを象徴しているんじゃないかな。
――仲野さんと池松さんの関係性は、どんなものだと感じていらっしゃいますか?
本当の兄弟に見えてくるぐらい、お互いへの信頼を感じますね。ふたりの佇まいから、脚本にあるような小一郎と藤吉郎のお互いに対するリスペクトと信頼が見えてくるというか。この人が弟やったら、やっぱりこの人がお兄ちゃんだなって思える。本当にキャスティングの妙ですね。

利家と藤吉郎は方向性が違うけど、同じ覚悟がある
――御前試合で不正を働いていた藤吉郎を利家は打ち負かしたわけですが、第6回ではその藤吉郎にアドバイスをするようなシーンもありました。御前試合を経て、利家の中で藤吉郎の存在が変わったのでしょうか。
藤吉郎って、見ていて面白いんですよね。確かに卑怯なところもあるけど、勝ちにこだわっている。第6回で「(藤吉郎がいなくなると)少し退屈じゃ」というセリフもあるんですが、そういう発想が利家らしくて。利家は礼節を持っているんだけど、目的のために何かを壊すエネルギーと、自分でその責任を取る覚悟がある。藤吉郎も同じ覚悟を持っていて、まったく方向性は違うけど、その藤吉郎の覚悟が面白いと感じたんじゃないでしょうか。
――史実では賤ヶ岳の戦いで、利家は上司である柴田勝家(山口馬木也)を裏切って秀吉(藤吉郎)側につくわけですが、今現在、そこに至るまでをどのように演じようと考えていますか?
それまでは信長という自分の仕えるべき相手がいて、利家としては迷いがなく、すごくシンプルだったと思うんです。賤ヶ岳の戦いについては史実を追えば追うほど、利家にとって難しい選択だったんだろうと感じます。信長に死罪を科せられた時も、とりなしてくれたのは勝家だし、利家が「親父様」と呼ぶくらい忠義を尽くしている相手。そんな勝家と、ずっと一緒に切磋琢磨してきた親友・秀吉との板ばさみって、利家の心情は相当なものだったはずだから、そこはすごく丁寧に演じていきたいと思っています。今のところ、いつか来る選択の日が怖いですね。