ドラスティックに物語が進みましたね。それもそのはず、今週だけで物語は5年以上も進んだようです。のぶ(今田美桜)は正式に薪鉄子(戸田恵子)の議員秘書になったものの、二人の考え方の違いがはっきりしてきました。メイコ(原菜乃華)は東京に出てきて健太郎(高橋文哉)と結婚、二人目の子どもも生まれ……そしてとうとう、嵩(北村匠海)は三星百貨店の仕事をやめる決断をしました。
一週間で、こんなに、ありすぎです。
もちろんネタバレですのでご承知おきください。
「大勢の人に自分の漫画を読んでもらえるとうれしいし、生きてていいんだってほっとするんだ」

昭和23年2月。
鉄子の事務補助員・世良(木原勝利)が去り、“秘書”と改名されたそのポジションに、のぶが就くことになった。

嵩は三星百貨店宣伝部でかなり頼りにされているらしい。描いたデザインも即採用! 仕事は早い。
合間を見つけて漫画を描きたいが、時間ができると別の仕事が降ってくる。
今度は三星劇場の芝居のポスターを制作することになった。
喫茶店で嵩は、ポスター制作のため、演出家から話を聞いている。
内容は、どうやら渡辺綱の鬼退治の話らしい。

そこに、なぜか話を背中で聞いていたらしい客が乱入してくる。
学生服の男はいせたくや(大森元貴)と名乗った。音楽と芝居が大好き、という。
(※北村匠海 振り返りインタビュー)
(※大森元貴 振り返りインタビュー前編)
その話をうちに帰ってのぶにする嵩。
仕事が楽しいらしい様子にのぶは少し安心している。
朝、二人分の弁当をわっぱに詰めるのぶ。
仕事にも二人で一緒に出る。(幸せそう)

嵩はポスターの原案を演出家に見せ、すっかり気に入られたようだ。
ところが彼から『新宝島』という漫画(作者は手嶌治虫だ!)が面白い、と見せられ落ち込んでしまう。(以前も東海林[津田健次郎]から手嶌の漫画を見せられ落ち込んでいましたね)

夜、鉄子に付き合って会食&酒を飲んで帰ってきたのぶに、嵩は落ち込んだ気分を話すが
「たっすいがぁはいかん」と一言。
漫画の懸賞に送ってみたら、と募集記事を見せる。
夜遅くまで漫画を描く嵩を気遣うのぶだった。

それから2か月後、「たまるか~」の知らせ。
懸賞に出した嵩の漫画が雑誌に掲載されたのだ。
「嵩、ようこんな面白いこと思いつくね」とのぶはウキウキだ。

蘭子(河合優実)とメイコが上京してきた。蘭子が転勤で東京に来ることになり、メイコもついてきたのだ。
2人は長屋の向かいに住むことになった。
メイコ「お手洗いから星が見えるところに住めるらぁて、もう、ワクワクする!」
さらにメイコはさっさと喫茶店の店員の仕事を決めていた。
蘭子「あの子、ああ見えてなかなか世渡り上手かもしれんがです」
蘭子が嵩の漫画を読んだ、と聞いて、嵩が言う。
「やっぱり大勢の人に自分の漫画を読んでもらえるとうれしいし、生きてていいんだってほっとするんだ」
のぶ「生きてていい?」
嵩「戦争に行った人間は、みんな、その気持ちで一日一日を生きてると思う。おれは千尋の分も頑張らないと。今は漫画描いてるだけで十分幸せだけど」
のぶ「24時間漫画のことだけ考えれたらいいのにね」
嵩「でも、そうすると、自分の才能が試されるだろう? 正直言うと、それはちょっと怖いな。『新宝島』みたいな漫画、ぼくにはとても書けないよ」
のぶ「でも、うちは嵩の漫画の方が好きや。ほんまに、心の底から思っちゅうき」
のぶ「漫画で食べれんでも、私が食べさせちゃるき。5年前から決めちょった。待っちょったで」
嵩「お待たせしました」

メイコの勤める喫茶店で嵩と待ち合わせしたのぶ。
現れた嵩は健太郎を伴っていた。NHKでディレクターをやっている(!)という。

のぶにコーヒーを持ってきたメイコは健太郎を見て(予想通り)軽くパニック。
その上、“メイコの夢はのど自慢に出ることだ”と嵩。するとNHKに勤める健太郎が“今度予選会があるから出てみたら?”と言ったものだから、メイコは舞い上がってしまう。
そばのカウンターに座っていたのは、またもや、いせたくや。どうやら学校は中退したらしい。
のど自慢の予選会に出るのなら練習に付き合いましょうか、とメイコに声をかける。

閉店後、たくやのピアノで「東京ブギウギ」を練習するメイコ。たくやはボイスレッスンもできるのだ。
(※大森元貴インタビュー中編)
水曜日はメイコの発声練習から。夜、長屋じゅうに聞こえる声で、
「あ~あ~あ~あ~あ~♪」

その声を聞きながらのぶは
「メイコは健太郎さんに聞いて欲しいがやないろうか?」
嵩「え? なんで?……まさか?」
のぶ「嵩、気付いてなかったがかえ?」
(って“のぶ、あなたが言う?”と視聴者全員が突っ込んでましたね、きっと)

メイコは予選会に出かけて行った。
場面はNHKのスタジオ。予選会が進んでいく。
そのころ嵩は健太郎に電話をして……?
メイコの番になった。曲目はもちろん「東京ブギウギ」。
ところが歌っている最中に健太郎が現れ、メイコは歌えなくなってしまい、不合格……。

メイコがうちに帰ってくると、長屋の中庭でご飯の支度をしている、のぶ、嵩、蘭子。
そこへ健太郎がやってきた。メイコの打ち上げに、と呼ばれていたという。
嵩の電話でメイコの予選を聴きに行った、と健太郎が言うと、みんな微妙な空気に。
メイコは拗ねてしまった。
健太郎「どげんしたと? おれ、メイコちゃんにそげん嫌われたとね? おれがなんしたとよ?」

蘭子「メイコ。いつまで想いを秘めちゅうつもりながで?……こういうことに関していうたら、うちの姉妹は三人ともへたっぴいやき、特にお姉ちゃんは」
のぶ「メイコ、蘭子の言うとおりや」
部屋に駆け込もうとするメイコに、健太郎が駆け寄る。
健太郎「メイコちゃん、ごめん。おれ、とんちんかんなやつやけん。ずっと気が付かんで、ごめん。メイコちゃんの気持ちにきがつけんげな。ほんとおれは、ふうたんぬるかね」
「(ふうたんぬるか、は)どんくさかってことばい。ほんとに、ごめんね」
メイコ(泣きながら)「健太郎さん、ずっと、ずっと好きでした。今も、今も大好きです。健太郎さん見よったら心が明るうなるがです。太陽みたいにまぶしゅうて」
健太郎「それ、おれがメイコちゃんに思いようとったことっちゃんね。闇市で店やりようとき、メイコちゃんが来てくれて、流れてくるラジオ聞きながら、『素人のど自慢』が好きって言いよったろ? おれ、それがきっかけで上京してNHK入ったとよ。メイコちゃんば、もっと喜ばせる番組が作りたかったんかもしれんね。メイコちゃん、ありがとう」
健太郎がメイコの手を取ると、またメイコは泣き出した。

それから半年と少し、で健太郎とメイコはゴールイン。
(※高橋文哉インタビュー)
二人の小さいお祝いを、行きつけの喫茶店で行った。
嵩からのプレゼントは、「もし、御免与町で結婚式を挙げたら」のイラスト。
そこには、釜次(吉田鋼太郎)やくら(浅田美代子)、豪(細田佳央太)、ヤムおんちゃん(阿部サダヲ)、父・結太郎(加瀬亮)も描かれていた。

のぶ「嵩の描くもんは、ほんまにあったこうて面白い」
嵩「やっぱり、おれは思いっきり漫画を描きたい。会社を辞めてもいいかな」
のぶ「うち、全力で応援するきね」
漫画や挿絵の仕事もあるから、副業で稼げるようになったら勤めを辞めて漫画一本で行く、という算段のようだ。
「来年には、漫画家・柳井嵩になってみせるから」
しかし、5年後、相変わらず嵩は三星百貨店に勤めながら副業として絵を描いていた。

一方、議員秘書をしているのぶ。鉄子のもとにこの日は“漆原先生”がねじ込んでくる。
「鞍替えのうわさは本当なのか?」
女性が国会議員として立場を固めるのは大変らしい……のぶの帰宅は深夜になっている。

喫茶店で嵩がランチを食べていると、そこに現れたのはまたもや、いせたくや。
この日、たくやはタクシーの運転手をクビになったという。客を乗せて歌を歌ったためだ。
「でもいいんです。ぼくはこれからは音楽で生きていきます」
手嶌治虫の『鉄腕アトム』の話になり、嵩はこの才能に圧倒されて嫉妬した、と話す。
たくや「嫉妬したって言えるなんて、あなたは強い人です。ほんとに強くなきゃそんな風に自分の弱さを認められません、ま、才能があるかどうかはともかく」

嵩の副業の収入は、ついに百貨店の給料を追い抜いた。
嵩は、不安じゃないのか? 苦労するのはのぶちゃんだから、と聞くが、
「全力で応援するき、全力でやってみや。漫画で食べれんでも、私が食べさせちゃるき。うち、嵩にそういわれたらこう言おうって、5年前から決めちょったもん。待っちょったで」
嵩「お待たせしました」
「でも、うちにはわかる。ちっぽけな嵩が、いつか天才もびっくりするような作品を作るって」

健太郎とメイコが、幼い娘・愛を連れて訪ねてきた。
メイコには二人目が生まれるらしい。
久しぶりにヤムおんちゃんのあんぱんたべたいなぁ、とメイコが言うと、
健太郎は新橋の辺りで屋村に似た人を見かけたと話す。
「こげな大きか壺、抱えとったばい」
全員声を合わせて「ヤムおんちゃんや」

そこで産気づくメイコ。
愛はそのままのぶの家で預かって……夜中に女の子が生まれた、と連絡が。
嵩「のぶちゃんみたいに、三姉妹になるかもね」
ほんまやね、と言いながら、ちょっと複雑な顔をするのぶ。

金曜日。
嵩は健太郎と話しながら「今日こそ退職願を出す」と言うが……安定している職場を離れる踏ん切りがつかない様子。
健太郎「安定ばとるか、自由ばとるか」
振り返ると、なんとそこには手嶌治虫(眞栄田郷敦)が!
どうやら次の作品について編集者と話している様子。嵩は聞き耳を立てている。

帰り際、嵩の靴紐がほどけたことに気づいた手嶌が“ほどけない靴紐の結び方”を教えてくれた。どこの誰とも、名乗らないまま……。
嵩はその足で、会社に戻って退職願を出したのだった。
(※眞栄田郷敦インタビュー)
一方、鉄子は“古だぬき”(つまり古手の男性議員)から何か言われたらしく荒れている。
のぶは「悲母の会」の声をまとめたものを「目を通してください」と手渡す。戦争で子どもを失った母親たちの、平和を願う声を集めたものらしい。
しかし鉄子は「わかった。あとで目を通しとくワ」とバサッとテーブルに置く。
のぶ「先生、いっぺん皆さんと話し合う機会を設けていただけませんろうか?」
鉄子「この私に、理想を追いかける余裕がどこにあるってゆうがで」
のぶ「先生は以前、民のために国を変えるとおっしゃっていました」
鉄子は私だってやりたい、といいつつも
「けんど、新しい政策を通さんと世の中は変わらん。……国会の下には泥沼のようなマグマがあって、その泥沼の中をうまく立ち回らんと生き残れん。政策一つ通せん。のぶさんみたいにきれいごとばかり言いよれんがや」
のぶ「戦争のない世の中を作るがは、きれいごとなんでしょうか」
鉄子「甘い! ゆうがじゃ」テーブルを叩く音。
一つ大きく息を吐いて
「私のやり方に文句があるがやったら、辞めてええがで」
肩を落として帰ってくるのぶ。
そこに登美子(松嶋菜々子)が待っていた。
「あら、のぶさん、ごきげんよう」
嵩に大事な話があると言われ、来てしまったという。

部屋に通された登美子は楽しそうに「なあに? 教えて?」
のぶは、嵩が三星百貨店をやめることを言ってしまう。
「嵩さんはプロの漫画家として、漫画だけで生きていく決意を固めたそうです」
登美子「のぶさん、もちろん反対よね?」
のぶ「いえ、私は嵩さんに、24時間、漫画のことだけ考えて、思いっきり漫画を描いて欲しいがです。私が支えます」
登美子「女のあなたが、どうやって?」
仕事もしているし、貧乏でも苦ではない、と言うと、
「夫が仕事をやめて漫画家を目指す人生がまっとうだと思っているの? そんな一か八かの人生にあなたは付き合うつもり?」
のぶ「そのつもりです」ときっぱり。
そこに嵩が帰ってくる。
嵩「今日、退職願を出してきた」
大反対の登美子が嵩を責め始める。
嵩「もうぼくたちの人生に立ち入らないでくれ。帰ってくれ」
登美子を追い出してしまったあと、月明かり、家の外でふたりで座って……
嵩は天才・手嶌治虫に会ったことを話す。自分は彼を意識したが、彼は自分のことを知らない。漫画を描いていることも、その存在も。おまけにすごい好青年だった、と。
嵩「それに比べておれは何てちっぽけな人間なんだろう」
のぶ「きれいなお月様」
嵩「なんか、手嶌治虫みたいだな。こっちからはまぶしくてよく見えるけど、向こう側からは見えない」
のぶ「でも、うちにはわかる。ちっぽけな嵩が、いつか天才もびっくりするような作品を創るって」
嵩「根拠がなさすぎるよ、のぶちゃん」
今週は、やなせたかしさんの著書の中でも数多くのエピソードが描かれている「手塚治虫」と「いずみたく」のお二人に相当する人物が登場しました。
次週は「見上げてごらん夜の星を」。嵩はいよいよ舞台の仕事にもかかわることになりそうです。やなせたかしさんは「アンパンマン」に至るまでに、本当にいろいろなお仕事をされています。その間、妻の暢さんはどうやって支えていたのでしょうか? 来週も楽しみです。ほいたらね。