今週火曜日、のぶ(今田美桜)が薪鉄子(戸田恵子)の事務所をクビになりました。それから7年後、嵩(北村匠海)はミュージカルの舞台美術を担当します。六原永輔(藤堂日向)が初登場。いせたくや役の大森元貴さんがアカペラで歌い上げた「見上げてごらん夜の星を」は素晴らしかったですね~。そして金曜日、今週最後は、光に透ける赤い血潮……もうすぐあの歌が生まれそうです。
もちろんネタバレですのでご承知おきください。
「ああ、それは、何があっても逆転しない正義だと思います。ぼくらは二人でそれを探しているんです」

のぶが嵩の散髪をしている。
「そういえば、子どもの頃もこんな風に髪きってもらったことあったなぁ」
(第1週で、再婚前の登美子[松嶋菜々子]が子どもの嵩に髪の毛を切ってやるシーンがありました)
部屋には真新しい黒板が置いてある。
「あの黒板、スケジュールでいっぱいになるとえいね」
仕事来なかったらどうしよう、という嵩に
のぶ「なんとかなるちゃぁ。仕事がなかったら、私が嵩さんを食べさせちゃるき」
嵩「ん? ん? 今なんて? 嵩さん?」
のぶ「独立を祝うて今日からさん付けで呼ぶことにしたがや。嵩さんはこれから有名な漫画家の先生になるのに、呼び捨ては失礼やき」
「嵩さんか」と嬉しそうな嵩。

薪鉄子議員の部屋に、一人の女性が訪問していた。
児童福祉施設の代表らしき彼女は、児童福祉法の改正を訴えている。
鉄子は涙ながらに、子どもたちが健やかに成長できる社会を一緒に目指しましょう、と言って女性の肩を抱くのだが……もう一人の秘書、中山が次の約束の時間だと、帰りを促す。「ごめんなさいね」
女性が去ったあと
鉄子「ちょっとのぶさん、勝手に予定変えんとって」と鼻をかむ。来客はのぶがねじ込んだものらしい。
実際には次の来客の予定などはなく、女性を帰したのは「出前のうなぎが冷めるから」。
あっけにとられるのぶ。

鉄子「うちに言いたいことがあるがやったら、さっさと言いなさい」
のぶは、ここで働かせてほしいと頭を下げる。
嵩が仕事を辞めたからだろう、という鉄子に、のぶは答える。
「それより、先生のもとで秘書を続けさせていただきたいがです。……探しゆうもんが、あるがです」
鉄子「それを見つけることが、あなたのしたいことかえ? それはここにおったら見つかるもんかえ?」
のぶ「私は見つかると信じています」
少し考える表情の鉄子。
「クビにせんといてください」

嵩は犬のキャラクターが登場する漫画を描いている。タイトルは「メイ犬BON」。
昼間、喫茶店で編集者にこの漫画を見せていた嵩は、“月刊ポンチの来月号にこの漫画が載るかも”、とのぶに言ったのだったが、すぐに電話が鳴って、掲載はなくなった、と告げられた。

しょんぼりした嵩は、“九州コットンセンター”という名の雑貨屋の店先で、八木(妻夫木聡)にその漫画を見せていた。八木はこの店の雇われ店長をしているという。
「ボン、ボン、セッシボン。さみしい人、ボンはあなたの友人です」
八木がそれを見て「ずいぶん情けない犬だな」
「ボンはぼくです。どこにも載せてもらえないし。ぼくの漫画は大衆受けしないんでしょうね」
八木「大衆なんかに媚びず、お前らしいものを描けばいいんだ」
嵩「ぼくらしいってなんでしょう?」
八木「重症だな」
子どもたちが何かを八木に持ってきた。カードのようだ。
裏の孤児院の子どもたちのアイデアを商品づくりに取り入れているらしい。

そこに鉄子が現れる。子どもたちが作ったカードを買いに来たのだった。
嵩と挨拶をかわしていると八木が嫌味を言う。
「ガード下の女王は今じゃ民の方じゃなくて権力の方ばっかり向いてるって言われてるよ」
鉄子は嵩に、のぶが探しているものは何か? と聞く。
嵩「ああ、それは、何があっても逆転しない正義だと思います。ぼくらは二人でそれを探しているんです」
鉄子「そんなもん、どこにあるっていうがで……のぶさんは、どういてそんな、あるかどうかもわからんもんを?」
嵩「彼女は戦争中の正義に流されて子どもたちを導いてしまったことを今でも負い目に感じているんです」
鉄子は礼を言って去っていった。

「ボン、ボン、セッシボン。さみしい人、ボンはあなたの友人です」
嵩の黒板には、打ち合わせや締め切りの予定がびっしり書き込まれていた。
のぶが仕事に出て行ったあと、その黒板にゴンッと頭を打ち付ける嵩。(つまり全部うそ、なんですね)
打ち合わせと称して喫茶店で時間を潰す嵩だった。
のぶが出勤すると、すでに鉄子が部屋で待っていた。
「大事な話があります」と鉄子が切り出した。
「のぶさん、あなたは私の秘書にふさわしくないと判断しました」
突然のことに驚くのぶ。
「クビ、ですか?」
仕事は世話する、という鉄子に食い下がるのぶ。しかし……
「ここにいても、あなたの探しているものは見つからないわ」
涙目の鉄子「6年間、ご苦労様でした」
火曜日は衝撃的なスタートになった。
(※戸田恵子 振り返りインタビュー)

夜、時間を潰して嵩が家に帰ると、のぶはすでに戻っていた。
「きょうはやけに早いね」
しかし本当のことが言えないのぶ。嵩も同じだ。
ふたりで深いため息をつく。
その夜、鉄子は八木の店を訪れ、のぶをクビにしたことを告げる。
鉄子「のぶさんみたいに清らかな人にはあての秘書はつとまらんき」
八木「あんたの方が怖くなったんじゃないのか? 彼女といると、自分の清らかな部分を思い出して、泥水飲めなくなりそうで」

しばらく登美子が来ていないので、のぶは家を訪ねて行くことに。
行ってみると……死んだ3人目の夫が遺してくれたという目白の家は大邸宅だ。
静かに茶を点てる登美子の髪には白いものが目立ってきた。
お義母さんを嫌な気持ちにさせて申し訳ない、と頭を下げるのぶ。

「私、失業したんです。代議士の秘書をクビになりました」
登美子は、なぜがんばって嵩を支えようとするのか、とのぶに聞く。
「嵩はのぶさんを養う責任があるでしょう?」
のぶ「私は嵩さんに養ってもらおうとは思っていません。亡くなった父が言ってたんです。おなごも遠慮せんと大志を抱けと」
では、大志は何か、とさらに問う。
「私は、嵩さんと一緒に探しゆうもんがあるがです。一生かかっても、嵩さんとふたりやったらきっと見つけることができると信じてます」
登美子「また、夢みたいなこと言って」

のぶは、お義母さんの夢はなにか、と聞く。
登美子の答えは“あの日に帰ること”。
嵩も千尋もまだ小さくて、清(二宮和也)がいて、夢見るように暮らしていた……短い間だったが幸せだった、と。
「あの人がいなくなってから、胸に空洞ができて、風が吹き抜けていくのよ」
のぶは嵩から聞いた話をする。幼い二人を残して母がひとり出て行った日のことだ。
「あの日、母さんは泣いてたんじゃないかな。だから、一度も振り向かなかったんだと思う。こう、白いパラソルをクルクルしながらぼくらに言ってた気がするんだ。自分はあなたたちの前からいなくなるけど、元気出して生きていきなさいって。あの日だけじゃなくてぼくに背を向けて去っていった日も、母さん、いつも泣いてた気がするんだ」

それをのぶから聞いて涙する登美子。
「あの子は優しすぎるのよ。清さんに似て。つい、あの子に清さんを重ねてしまうの。清さんの代わりに嵩が私を幸せにしてくれるんじゃないかって。あんな日はもう二度とこないのに。あの人はいないのにね」
登美子が点てた茶を喫して、
「実は私、クビになったこと、まだ、嵩さんに言ってないんです」
嵩は独立してから仕事がたくさん入って忙しくて、心配をかけたくない、という。
登美子は忙しいのはうそをついているのでは? という。くすっと笑って、
「大丈夫よ、きっと。早く嵩に話しちゃいなさい」
のぶ「また、お茶をいただきに来てもえいですか?」

水曜日。
登美子の家から帰ってきたのぶは
「あのね、うち、嵩さんに言ってないことがある」と切り出した。
嵩も「実は、ぼくも」
ふたりで「実は」
嵩は黒板を指して「ここに書いてあるのは全部うそなんだ、見栄張ってうそついて、ごめん」
のぶは笑って
「うちの方はもっと深刻なが。秘書をクビになりました。ごめんなさい」
嵩「そうか……お先真っ暗だね。これからどうしようか」
のぶは、これくらいではへこたれない、次の職場で頑張るから、嵩は気兼ねしないで漫画を描いてと励ます。

夜。嵩は『メイ犬BON』を描いている。
ぶつぶつ言っているセリフは
「ボン、ボン、セッシボン。さみしい人、ボンはあなたの友人です。……あなたがげっそりしてもう死にたいと思うとき、あなたをどうしても微笑させるのが生きがいです」
(漫画にしてはなかなか暗いセリフですね……同じタイトルの漫画『メイ犬BON』は、これよりあとの昭和34年、やなせたかしさん40歳の年に自費出版されています)
「柳井さんは人を描ける作家です。ぼくにはわかります」
7年後、昭和35年。
柳井家で買ったというテレビで大相撲中継を一緒に見ている、のぶと蘭子(河合優実)、メイコ(原菜乃華)とメイコの二人の娘。若乃花や栃錦の取り組みで盛り上がっている。
蘭子は勤めのほかに、ライターとして映画評論などを書いているらしい。

嵩と健太郎(高橋文哉)は喫茶店で話している。この日も自分が売れないことを嵩は嘆いていた。
健太郎「どんより暗かぁ~もう……いくつんなっても変わらんちゃんね、柳井君は」
健太郎は襟足の髪を長く伸ばして、なんだか当時の業界人っぽく(?)なっていた。

嵩が留守の柳井家に、いせたくやが一人の青年を伴って訪ねてくる。
六原永輔と名乗る、背が高くてシュッとしたおしゃれな男だ。調子がいい。
二人は上がり込み、たくやが最近作曲しているコマーシャルソングなどでメイコたちと盛り上がる。
そこで永輔が、ミュージカルの舞台美術を嵩に依頼したい、と切り出した。誰も見たことがない、日本で初めて作るミュージカルの舞台。まだ嵩に会ってもいないのに、永輔はさっさと決めて帰ってしまう。
夜、戻ってきた嵩にのぶがそのことを告げると
「でも舞台美術なんてやったことないよ?」
「たくやさんは嵩さんの(三星劇場の舞台の)ポスターにほれ込んで、力になって欲しいがやって。嵩さんの才能をわかっちゅう人が力になってほしいってゆうがで?」
自信がない、という嵩に
のぶ「たっすいがぁはいかん」(出た!)
「なんか、のぶちゃんのそれ、久しぶりに聞いたな」
のぶは明日の場所を記したメモを渡した。

ミュージカルの稽古をしているところを訪ねた嵩。
歌の練習にたくやがダメ出ししている様子を見ていた嵩の目の前に、永輔が突然ぬっと現れ、詰め寄るように近づいてきた。
永輔「ぼくとたくちゃんは一切の仕事を辞めました。あなたも、このミュージカルに一切を捨てて、取り組んでください」
「えっ?」
思いっきり引いている嵩を無視して
「よしッ、柳井さんも合流しました~。みなさ~ん、柳井さんですよ~」(パチパチパチ)
(ちょっと鼻にかかった高めの声が、永六輔さんのイメージと重なりますね)
たくやは「あいつは演出家で作家の六原永輔。ま変わったやつなんだけど、天才、だから」ととりなす。
嵩「いや、でも、会うなり言うことがあれか?……ごめん、ちょっとぼく、帰りますわ」
そこを拝み倒すたくや。
(※藤堂日向インタビュー)

木曜日、拝み倒されて帰れなかったらしい嵩はたくやと永輔に挟まれて、ミュージカルの演者たちに改めて紹介された。
嵩(小声で)「たくちゃん、まだやるって決めたわけじゃ……」
永輔「奥さんステキな人だからどんな人だろうって思ってたけど、なるほどなるほど。結構結構(ああ、この感じも永六輔さんっぽい)……奥さんも大変だ、こりゃ」
テンポよくひとりでしゃべり倒す永輔。
たくやから手渡された台本のタイトルは『見上げてごらん夜の星を』
思わず、ステキなタイトルだね、と言ってしまう嵩。
そこで物語の流れを、舞台を使ってサラッと説明。(夜学と普通科にそれぞれ通う高校生たちの青春グラフティー)
たくやは嵩に、まずイメージを描いて欲しい、明日まででいいので(!)と言って稽古に戻ってしまった。

結局引き受けて帰ってきた嵩は楽しそうにイメージを描いていた。
出来上がった絵を見て、たくやは「いいと思います」
永輔は「こんな感じであと3つほどお願いしますよ」
驚く嵩。
舞台は初めてなので、イメージを教えて欲しいという嵩に、永輔は一任する、と言って握手。「このミュージカル絶対成功させましょう」
「あ、ちなみにぼくもたくちゃんもミュージカルは初めてです」
(なんと! 丸投げだ!)
うちでイメージ画を描きながら
「みんな、独創的って言うか、変人っていうか、個性が強すぎるんだ。ついて行けんのかなぁ。やっぱりぼく、ダメかも」
のぶはとなりで鉛筆を削りながら
「でも、嫌な気はせんがやろ? 嵩さん、楽しそう」

稽古が進むにつれて、シーンが増えていき、嵩の仕事も増えていく。
嵩はペンキを塗ったりして大道具づくりにも参加している。
本番前日にもダメ出しをする永輔。たくやに曲の修正も依頼する。
「いいものを作るため、ですから」
永輔は妥協しない。
夜は更けていき、稽古は続く。
(※藤堂日向 振り返りインタビュー)
のぶはおにぎりをにぎって差し入れに訪れた。

そこで、一曲だけでも聴いて行って、と、たくやが歌う。
ご存じ「見上げてごらん夜の星を」。
(大森元貴のアカペラソロを1分以上にわたって聴けるなんて……素晴らしかった~自然と涙が……)
(※大森元貴 インタビュー後編)

そして場面は初日になって……ミュージカルの舞台を見ているのぶ、嵩、そしてたくや、永輔がいた。
金曜日は舞台のあとの打ち上げの場面から。
永輔からお礼を言われ、嵩は「どの歌詞もすてきだった」と言うと
永輔「柳井さんにだって書けますよ」
嵩「いやいや、俺には無理だ」
永輔「柳井さんは人を描ける作家です。ぼくにはわかります」
(※藤堂日向 振り返りインタビュー)
「手のひらを、透かして見れば、真っ赤に流れるぼくの血潮」

舞台が終わって、ぼーっとしている嵩。
そこにたくやがやってきて、「柳井さんは歌詞が書ける人だ」と熱弁をふるう。
嵩の漫画はセリフも面白く、悲しくて、どこかあったかい……
たくやの熱弁を背中で聞いてちょっとうれしそうなのぶ。

「一度、歌詞を書いてみてくれませんか。ぼくがその詩にメロディーを乗せるんで。また一緒に楽しい仕事しましょうよ」
それに対して嵩は、自分は漫画家なんだ、漫画を描くべきなんだと言って帰してしまう。
たくやを見送りに出たのぶは残念そう。

やってみたらいいじゃない、というのぶを遮るように
嵩「ぼくの仕事に口出さないでくれ」
のぶ「ごめんなさい」
そうしてのぶは「遅くなる」と言って出かけて行った。

のぶは昼間会社で働き、夜は八木の雑貨屋で働く、ダブルワークをしていた。
そこに蘭子がやってくる。
蘭子「どうも、姉がお世話になってます」
八木「世話なんかしてないよ」
相変わらずだ。
店で蘭子に、嵩が作詞の仕事を断った話をこぼしていると、聞いていた八木がぼそっとひとこと、
「あいつの書く言葉は全部、俺には詩に聞こえるけどな」
遅く帰ってきたのぶは、嵩の机の上に4コマの四角い枠しか書かれていない紙を見る。スランプは続いているようだ。
ある日、嵩が八木の店に行くと……そこで働いているのぶを見つけてしまう。

「のぶちゃん、どうして……」
八木「のぶさんは、お前に好きなことをやらせるために、二人分働いてるんだよ」

雷が鳴る中、雨に濡れて二人で家に帰ってくるのぶと嵩。
玄関に入ると嵩はのぶを抱き寄せ
「のぶちゃんばっかり、苦労かけてごめん」
「苦労らぁて思うてないで。店の手伝いも、いろんなお客さんが来て面白いがやき。たまたま今、描きゆう漫画が売れんだけやろ? それやったら何でもやってみればえいのに。人を喜ばせるのって漫画だけに限らんと思う」

雨に濡れた身体を互いに拭いていると……停電になる。
あわてて懐中電灯を探して……つけてみると、ふいにのぶが
「嵩さん、見て!」

懐中電灯を手のひらでふさぐと、赤い光がぼーっと……。
のぶ「ほら、血がながれゆう」
お互いに懐中電灯を手でふさぎながら
嵩「手のひらを、透かして見れば、真っ赤に流れるぼくの血潮」 あっ!
手のひらを太陽に♪の歌詞が、実は太陽じゃなくて懐中電灯から生まれたお話は、やなせたかしさんがいろいろな本に書いていらっしゃいますね。(※元秘書・越尾正子さんインタビュー)
来週のタイトルはそのものズバリ「手のひらを太陽に」。きっとあの歌が聴けそうです。そしていよいよテレビ出演!(実際にやなせさんはNHKの「まんが学校」に出演していた)となるのでしょうか? ほいたらね。