入選作品一覧
「新・介護百人一首2021」へのたくさんのご応募ありがとうございました。
寄せられた短歌10,038首の中から選定された100首をご紹介します。
掲載内容は2021年の応募時点の情報に基づいています。
あ
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上野眞知子
そら豆は 五十回 唐揚げは 百回かむとう 九十三歳 -
磯部剛
父の掌に 氷砂糖の 一粒を 載せてあげたり 面会室に -
阿部昭子
母眠る 家へと自転車 走らせる オリオンらとの 銀河の時間 -
上原詩穂子
絞り出す 声で歌った 「菩提樹」よ 途切れ途切れに 苦しみながら -
浦上紀子
脳活にと 母としりとり しておれば ポンと答える 昨日よりポン -
大江美典
エンシュアの 缶で溢れる シンクにも 春のひかりは やわやわと差す -
小川藤代
お箸がね 持てなくなったの てづかみの 冷やし中華が 美味しかったわ -
秋山禮子
「電気消せ」 トイレのドアに 夫の文字 逝きし後まで 我が家のあるじ -
石田信夫
母親の 入浴拒否の 口実は 「毎日家で 入ってますけえ」 -
石井千代子
「顔上げて」 「背筋伸ばして」 はっぱかけ 夫と手つなぎ 湖畔を歩く -
伊集院浩子
ひまわりが デイサービスを のぞいてる 空気入れ替え しばし窓あけ -
ペンネーム 井上タカ
利用者と 職員一緒に ベランダで 花火待ちわぶ 若戸の夏夜 -
荒田光希
車椅子 押す手に込める この想い ほんの少し 伝わりますように -
大野一与
コロナ禍で 夫は家族に 会いたいと 乱れた文字が 絶筆となる -
大野奈美江
だんだんと 体が壊れて いくと言う 老いたる母の 湿布をかえる -
岩城正英
通院に 同伴される 恥ずかしさ 苛立つ我を 包み込む母 -
小田千鶴
亡くなりし 子に何回も 電話する 母の記憶に 残る番号 -
岡本三陽子
電話口 童謡歌う 我の目に わき出る涙 声をつまらせ -
内谷旭陽
なんとなく ではなく固く 決意して 目指しているのは 介護福祉士 -
大窪純音
介護ロボ 寄り添えるのは 身体面 心に寄り添う 介護福祉士 -
浅沼和貴
Ｗｅｂ面会 会いたい家族は 画面越し 笑顔変わらねど コロナよ消えろ
か
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久保田鶴子
逝きし母の あかぎれの指 痛ましく ワセリン塗りて 棺に納む -
木村誠
起床介助 始める前の 緊張を 「みんなのうた」で テレビはほぐす -
小松紀子
病窓の 夜空の花火に 頷きて 父が生を 終へたのは夏 -
加藤鈴音
車椅子 使ってみると 気付くこと 道端に咲く 可愛いお花 -
金武隆
折込みの 施設案内 前にして 自宅介護を 妻と語らう -
北原俊紀
入院の 決まりし父の 背をさする そうだよ父さん 洋子の手だよ -
門川幸枝
コロナ禍の 暗き日夜に 点されし 介護百人 一首の募集 -
黒沢知花
初実習 着衣介助の 靴下で 麻痺した足の 重たさを知る -
幸田雅人
注意せよ パワー介護に ならぬよう 重心低く ボディメカニクス -
小谷 世司人
気分良い という妻の乗る 車椅子を 雪の大山 見ゆる部屋へと -
小西春見
杖ついて 礼拝帰り ふと浮ぶ 北アルプスを 縦走せし杖 -
海瀬安紀子
じいちゃんと 毎日豚を 見に行った ホントはいないと 知ってたけれど -
加藤熙子
家中の カーテンスリッパ 取っ払い 歩けぬ貴男の 歩道を作る -
黒木直行
食べながら 白寿の父が 泣いている 子どものような くしゃくしゃ顔で -
木村弘治
炎天へ 漕ぎだしてゆく 車椅子 ゼブラゾーンの 人等掻き分け -
小清水泰聖
介助では 早さが自慢に ならないぜ 一人一人に 合わせた早さ
さ
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清水友唯
たくさんの 感謝に溢れる 介護職 人との出会いが 自分を変える -
柴田有里
あてどなく 義母とドライブ 五十キロ 「痛くて寝れぬ」 午前二時半 -
添島貴美代
戦友が 父に言いたり 「命令だ 死んだやつらの 分まで生きよ」 -
佐藤未菜美
おじいさん 顔赤くして むせこむも 私は顔が 真っ青になり -
笹川幸震
要介護の 三人寄れば 兵たりし 頃の矛盾に 話題ははずむ -
末上洋美
転んだら 骨折り寝たきり 脅し文句 恐くないぞと 畑に精出す -
佐久田美玖
あなたと お喋り するために 必死で覚えた 温かい方言 -
砂田京子
庭いっぱいの 洗濯物が 消え去りぬ 冬に耐えきし 父は逝きたり -
佐久間和子
若き日に 護身術とうを 習いけり 今も求める 拳の極意 -
頭本信代
枕辺に 置きて眠りし 携帯も 役目終えたり 母旅立ちて -
澤口茉那
初めての 食事介助は 手が震え なかなか口に たどり着かない -
佐藤清一
目も耳も 空ろになりし 九十九才 杖つく音の 乱れて淋し -
庄野悦子
ワクチンを 済ませた後の 面会に 「夢の人やな」と 父は言いたり -
杉山泉
ベッドにて 父の背中に 背をあてて 呼吸を感じ 涙あふれる -
鈴木美宰代
ローレライ 突然歌う ドイツ語で 幼き頃の きおくのとびら
た
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對馬葉子
商いを 閉じて五年 早経つも 今日の売上 夕べに聞く夫 -
タマン サクンタラ
異国にて 働く私に 利用者は 「あなたえらい」と やさしい顔で -
髙栁美恵子
耳澄ます 寝息聞こえぬ 暗闇に 二人同時の 無呼吸となり -
田中洋子
「ふるさと」を 口遊む姑も 老い深む 眼裏に青き 古里あるや -
徳島季美子
紫陽花を 愛でつつ思ふ 来年は 此の花の名を 問ふ吾かとも -
髙田勇
ケアとは ゲルマン語にて 愛という 言葉がもとと 知りてうれしき -
田中早苗
ちいとばか 疲れてきたよ この婆も 夜半の尿採り 六回はねえ -
高田真紀
座ってて？ それでも私は 席をたつ 帰るのよ必要と されたあの頃に -
ペンネーム 高橋泰源
タブレット 画面に映る 病室の 母が薄くて 母より母だ -
角田好弘
ひもすがら 微睡む媼の 傍に寄り 亀の甲羅の ごとき爪切る -
高木富美子
コロナのため 面会時間は 十五分 残る夫の 夜は長からむ -
タパ マガル ヤム クマリ
「あんたんときは 美味しかねぇ」 食事 介助する手に 喜び走る -
富田加奈子
会いたいと 忍び泣く母 励まして 涙を拭きたい 画面越しにも -
千木良雅一
新聞紙 拡げ真中 穴をあけ 介護床屋の さあ開店だ -
平良りヱ子
シャツの背を ズボンに押し込む 隙もなく 廊下を走る 若き介護士 -
冨田恵美子
能面の 顔となりにし 母親の 下の世話する 能面娘
な
は
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藤田與一
ケアハウス 此処が私の 現住所 窓越しのバラ 真っ赤に咲いた -
橋本幸子
ヘルパーの 来る日は窓を 開けて待つ 老人臭さを 逃すためにと -
林胡桃
ドライヤー 熱くないですか そう問うと みな大丈夫と言い 不安になる -
堀田繁信
明日のデイ 弱音を吐けば 娘は笑い 「引きこもり親父」と 親の背を押す -
星野茉穂
あの言葉 寝たきりになっても 口ずさむ 「店番せんば」 祖父は最後まで商売人 -
林スミ子
手の平に 受けし入れ歯の あたたかし 母洗ふごと 愛しみ洗ふ -
林摩利子
介護する 母の手クリーム 塗る時だけは 優しい娘に 戻れたあの日々 -
ビスタ アールズン
介護職 感極まって 母国語に 日本のお婆ちゃん びっくりします
ま
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三木德子
田植えする 農夫のように 腰曲げて ぬけ出す患者 見守る夜勤 -
三好幸子
お帰えりと 人感センサーに 迎えられ さりとてさりとて 一人の暮らし -
宮川美代子
夫の押す 車椅子に見る 青空は 早春の香する 大池公園 -
村上憲市
プライドを 保つ父親 介護して パンツ替えようねと オムツを替える -
村尾姫和
おばあさん 眼鏡や財布 忘れても あの時のこと 忘れはしない -
美馬和子
戦場で 孤軍奮闘 夫を叱り 援軍のない 老兵の介護は -
松野楽々
実習で 別れを惜しむ あの人に 姿見せるぞ 一人前の -
松本尚樹
寅さんと 違いふらりと 旅立てど 帰って来れぬ 父のあと追う -
室谷益子
五分粥は 顔がうつると 嫌ひたり 今日より全粥 箸立つと夫 -
森下博史
猫が鳴く ように不満を 洩らす母 純白の毛を 細かく揺らし
や
ら
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ルオン バン バック
実習で 不安な時に 思い出す 遠く離れた ベトナムの家族
わ
